アーサー王伝説をモチーフに、崩壊した現代のロンドンを舞台とするアクションアドベンチャー『壊滅の潮汐(Tides of Annihilation)』。中国・成都を拠点とするEclipse Glow Gamesが開発を手がけています。
本作では、主人公・グウェンドリンが円卓の騎士たちを召喚し、彼らと連携しながら戦う独自のアクションシステムを採用。アーサー王伝説を下敷きとしつつも、中国やエジプトなど異なる文化圏の要素も取り入れた独自の世界が描かれます。
今回、中国・成都で開催された試遊イベントにあわせ、本作の開発チームへの合同インタビューが行われました。発売時期やレベルデザイン、影響を受けたゲーム・漫画、主人公グウェンドリンのデザイン、そして生成AIに対する開発チームの考えまで、さまざまな話を伺いました。

発売時期は「それほど遠くない」。初のプレイアブルデモは現在の開発成果
――今回が初めてメディアに向けてプレイアブルデモを公開する機会とのことですが、現在の開発状況はいかがでしょうか。発売時期についても教えてください。
開発チーム:まず、今回が私たちにとって初めてオフラインでデモを公開する機会になります。最初にゲームを発表して以来、実際に皆さんに遊んでもらえる機会をずっと楽しみにしていました。
今回のデモは、私たちが現在到達している開発段階のひとつの成果でもあります。発売まではそれほど遠くないと考えていますが、現時点では最終的な発売時期をお伝えすることはできません。


オープンワールドではなく、ストーリー主導のリニア型
――デモでは進行方向を示す黄色いペイントや、プレイヤーが進めない場所を区切る“見えない壁”がいくつかありました。これは製品版でも同じなのでしょうか。それとも、試遊用デモだからでしょうか。
開発チーム:レベルデザインについて、単純にプレイヤーの進行を妨げるためだけの「見えない壁」を置くことはしたくないと考えています。
基本的には「見えている場所には、できるだけ実際に行ける」ようにすることを目標にしています。プレイヤーに行ってほしくない場所がある場合にも、単純な見えない壁ではなく、アートやレベルデザインによって自然な形で表現していきます。
今回のデモには時間的な制約がありますから、戦闘や探索、ボス戦までスムーズに体験してもらえるよう、通常よりもレベル構造をコンパクトに調整しています。その影響で、一部に見えない壁が存在しています。
ただ、ひとつ強調しておきたいのは、本作はオープンワールドゲームではないということです。ストーリーに沿って進んでいく、比較的リニアな構造のゲームです。そのため、物語に合わせてプレイヤーを導いていくレベルデザイン自体は存在します。

――今回のデモでは衣装や装備、さらに新たな騎士などがかなり早いペースで手に入りました。製品版でも同じペースになるのでしょうか。
開発チーム:今回のデモでは、短い時間でもゲームの各要素を段階的に体験してもらえるよう、ゲーム全体の流れを調整しています。そのため、実際のゲームとまったく同じ順番でコンテンツを配置しているわけではありません。
衣装や新しい騎士など、多くの要素を短時間で体験できるようにしているという意味では、確かに本作の魅力を凝縮しています。
一方で、このデモが製品版の一部分を切り取ったものであることも事実です。製品版では進行の順番などに多少違いがありますが、基本的なゲームプレイやレベルデザインについては、今回体験してもらったものに近いものになります。
――製品版では、装備や衣装、騎士以外にもさらに多くの要素をアンロックできるのでしょうか。
開発チーム:もちろん、今回お見せしたものがすべてではありません。さらに多くの要素を用意し、より良いシステムにするため開発を進めています。

アーサー王伝説を知らなくても楽しめる「新しいアーサー王の物語」
――日本では、アーサー王伝説そのものに詳しくないプレイヤーも多いと思います。原典を知らなくても本作の物語を楽しめるのでしょうか。
開発チーム:もちろんです。
本作はアーサー王伝説をベースにしていますが、原典を写実的に再現した作品ではありません。私たちクリエイター自身の視点から、改めて解釈し直した物語です。
つまり、本作で描いているのは「新しいアーサー王の物語」です。現代を舞台としたアーサー王伝説と“灰霧の世界”がどのような物語を生み出すのか、ぜひ楽しみにしていてください。
――アーサー王伝説が大きなモチーフとなっていますが、今後マーリンやエクスカリバーといった、さらに有名な要素も登場するのでしょうか。
開発チーム:本作はアーサー王伝説から着想を得ていますので、今後もさらにさまざまな要素を取り入れていきます。
ただ、具体的に何を登場させるかについては、ゲーム全体の流れや各レベルとの兼ね合いを考えながら配置しています。皆さんが期待しているようなキャラクターや要素についても、今後さらにお見せできるものがあると思いますので、楽しみにしていてください。
一方で、アーサー王伝説をそのまま再現しているわけではありません。あくまでそこからインスピレーションを受けながら、私たちなりの物語を作っています。
アーサー王だけではない。博物館を通して異文化を融合
――デモではエジプトを思わせるエリアが登場し、アヌビスとも戦います。アーサー王伝説やエジプト以外の文化・神話も登場するのでしょうか。
開発チーム:もちろん、本作に登場する騎士たちの多くはアーサー王伝説を出典としていて、ゲーム全体でもアーサー王伝説が非常に大きな割合を占めています。
一方で、私たちはさらに多くの文化を作品に融合させたいと思っています。そのために「グレート・ラッセル博物館」は非常に便利な舞台になっています。物語としても、さまざまな文化を自然な形で登場させられる場所だからです。
今回のデモでもエジプトのアヌビスや中国をテーマにしたエリアなど、異なる文化を取り入れています。
ただし、あくまで本作の中心にあるのはアーサー王伝説です。

――デモには「武聖(Martial Saint)」が登場し、グウェンドリンの師匠のような立場になっています。彼女自身に中国とのルーツがあるのでしょうか。
開発チーム:現時点では、そのような具体的な設定があるわけではありません。グウェンドリンと武聖との関係はゲーム中のストーリーやレベルを通して描かれます。
ある出来事をきっかけにふたりが出会い、一時的に師弟のような関係になります。武聖はグウェンドリンとともに戦いながら、ゲームのチュートリアル的な役割も担うキャラクターです。
また、本作はアーサー王伝説をベースにしていますが、ファンタジー作品としてさまざまな文化を融合させたいと考えています。
デモに登場する「グレート・ラッセル博物館」は、イギリスの大英博物館からインスピレーションを得ています。博物館という場所には世界中の異なる文化が集まっていますから、ゲームとしても非常に大きな創作の余地があります。そこで中国やエジプトなど、さまざまな文化の要素を取り入れており、武聖も中国文化を象徴する存在のひとりです。

――武聖は中国語で話していますが、グウェンドリンは実際に中国語を理解しているのでしょうか。それとも、精神的なレベルで意思疎通しているのでしょうか。
開発チーム:ふたりのコミュニケーションは、厳密には言語を介したものではありません。
武聖は異なる時空から来た存在なので、彼自身が発している声と、グウェンドリンが“灰霧の世界”を通して受け取っているものには違いがあります。
簡単に言えば、ふたりは言語そのものではなく、直接お互いの意思を理解しています。本作は発売時に11言語への対応を予定していますから、「武聖が中国語を話して、それをグウェンドリンが英語として理解している」といった設定ではありません。
『ジョジョ』『Fate』『ベルセルク』――ゲームや漫画から受けた影響
――アーサー王伝説以外に、ゲームや漫画などから影響を受けた作品はありますか。
開発チーム:ゲームだけでなく、漫画やアニメなど、本当にさまざまな作品から影響を受けています。
たとえば本作では、グウェンドリンとともに騎士が現れて戦います。この仕組みについては『ジョジョの奇妙な冒険』の「スタンド」と似た感覚があります。私たちは『ジョジョ』が大好きですし、騎士が前に現れて一緒に戦う姿にも影響が表れています。
また、アーサー王を題材にした作品という意味では『Fate』シリーズからも大きなインスピレーションを受けています。
『ベルセルク』からも、人間と超越的な存在との戦いという部分で影響を受けました。
ゲームでは『ワンダと巨像』、『ゴッド・オブ・ウォー』の初期三部作、『ファイナルファンタジー』シリーズ、『デビル メイ クライ』シリーズなどですね。偉大な先人たちの肩の上に立ちながら、私たちなりの新しいものを作ろうとしています。

『アサシン クリード』『龍が如く』『ペルソナ』経験者も参加
――中国では、欧米から見るとシングルプレイヤーの大規模タイトルを開発するイメージがまだあまり強くありません。なぜこのような作品を作ろうと考えたのでしょうか。
開発チーム:私たちのチームには、もともとアクションアドベンチャーゲームが大好きなメンバーが集まっています。また、多くのスタッフが過去に大規模な商業ゲームの開発に携わってきました。
『アサシン クリード』『龍が如く』『ペルソナ』といった作品に関わった経験を持つスタッフもいます。
アクションゲームが好きで、シングルプレイヤーゲームの開発経験を持った人たちが集まった結果、私たちのスタジオが生まれ、自然な流れでこの作品を作ることになりました。

――本作のような大規模タイトルを開発するうえで、特に難しかったことは何でしょうか。
開発チーム:本当にたくさんの困難がありました。私たちは新しく立ち上げたチームですし、そのチームでこれほど大規模なゲームを初めて開発しています。開発パイプラインの構築や、さまざまな技術の活用など、多くの問題に直面しました。
ただ、チーム自身の経験だけでなく、Epic GamesやNVIDIAといったパートナーから技術面でさまざまな支援を受けています。そうしたパートナーと一緒に技術開発を進めることで、ひとつずつ問題を解決しています。
そしてもうひとつ、中国の開発チームがアーサー王伝説をテーマにした作品を作ること自体も、大きな挑戦でした。
私たちはアーサー王伝説やイギリス文化を非常に尊重しています。そのため開発初期にはチームで何度もイギリスを訪れ、現地を取材したり、研究者や専門家から話を聞いたりしました。
中国国内でもイギリス文化や歴史に詳しい研究者・専門家の協力を得ながら開発を進めています。

グウェンドリンは「騎士との戦闘システム」から生まれた
――主人公グウェンドリンのキャラクターデザインは、どのように生まれたのでしょうか。
開発チーム:グウェンドリンは、最初から現在の姿が決まっていたわけではありません。むしろゲームプレイや戦闘システムを先に考え、そこから徐々にキャラクターが形になっていきました。
私たちが最初に作りたかったのは、騎士団とともに戦うチーム型のアクションゲームです。騎士を組み込んだ高速なコンボを実現したいと考えていました。
騎士たちは硬い鎧を身に着けていて、「力強さ」を象徴しています。そこにグウェンドリンという優雅で美しいキャラクターを加えることで、剛と柔の両方を持った戦闘を表現できるのではないかと考えました。
また、東洋と西洋のどちらから見ても美しいと感じられるような要素を融合させたいという思いもありました。そうした試行錯誤を重ねながら、現在のグウェンドリンのデザインが徐々に完成していったんです。

――デモには多数のカットシーンがありました。主要キャラクターのフェイシャルアニメーションやモーションキャプチャーはすでに完成しているのでしょうか。
開発チーム:顔まわりについては、現在も開発と最適化を続けています。
表情や細かな微表情、リギングなど、さらに細部まで改善したいと考えています。発売までにはまだ取り組むべきことがありますが、人員も投入しながら、より自然でスムーズな表現を目指しています。

生成AIは注視しているが「伝統的なゲーム開発のパイプライン」を採用
――開発プロセスでは、生成AIをどの程度利用していますか。
開発チーム:私たちはAI技術の発展には常に注目しています。ここ数年、特に画像生成をはじめとしたAI技術は非常に速いスピードで進化していますから、継続的に動向を追っています。
ただ、私たち自身の開発パイプラインについては、比較的伝統的なシングルプレイヤーゲームの制作手法を採用しています。
チームには長年ゲーム業界で働いてきた経験豊富な開発者が多く、そうしたクリエイターたちがこれまで培ってきた技術や、自分たちが得意とする制作プロセスを活かしています。
本作はスタジオにとって最初の作品でもありますから、まずは私たち自身が最も得意としている方法と開発パイプラインで、この作品を作り上げたいと考えています。
――最後に、プレイヤーへメッセージをお願いします。
開発チーム:改めて、中国・成都まで来て私たちのゲームを遊んでいただき、本当にありがとうございます。皆さんに実際に遊んでもらえるこの瞬間を、私たちもずっと楽しみにしていました。
今回のイベントやデモについて気になるところがあれば、ぜひフィードバックをいただきたいです。いただいた意見を今後の開発に活かし、さらに良いゲームにしていきたいと思っています。
本作は私たちのスタジオにとって最初の作品です。世界中のプレイヤーの皆さんに認めてもらい、愛してもらえる作品になることを心から願っています。
ゲームクリエイターとして、自分たちが作ったゲームを皆さんに実際に遊んでもらえることを、とても幸せに感じています。遠いところから応援に来てくださった皆さん、本当にありがとうございました。
『壊滅の潮汐』は、PC(Steam、Epic Gamesストア)/PS5/XBOX Series X|Sで発売予定です。












