フロム・ソフトウェアが手掛けたアクション・アドベンチャー『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(以下、SEKIRO)』を原作とする劇場アニメ「SEKIRO: NO DEFEAT」が、9月4日(金)より全国劇場にて3週間限定で上映中です。
制作スタジオはQzil.la、製作・プロデュースはKADOKAWAとARCHが担当。戦国末期を舞台にした狼と九郎の物語を、全編手描きの2Dアニメーションで描く意欲作です。
本記事では、そんな本作で監督を務める沓名健一氏へのインタビューをお届け。3DCGで作られた原作にあえて手描きで挑んだ理由や、時代考証・古流剣術への徹底した取材など、あの緊張感あふれる剣戟がどう生まれたのかがうかがえる内容となっています。

掲げたのは「切なくて美しい」
――ゲーム原作の『SEKIRO』をアニメ映画として制作するにあたって、最初にこの作品で何を描くのか、テーマや方向性はありましたか。
沓名監督:テーマは企画書の段階で、わりと自分がさっと決めました。「切なくて美しい」という単語を最初に提示した記憶があります。
これはゲームから受け取った感覚なんですけれども、切ないドラマを最大限美しく描くことがこの作品には必要である、と。作品の内容というより、作る我々のテーマとして掲げたものです。
作品そのもののテーマとしては、九郎と狼のドラマをどう作るか。最初から最後まで生きるか死ぬか、誰が死ななければならないのか、という話がずっと続くので、死に対する考え方を制作中ずっと掘り下げて考えていました。
完全に言語化するとシンプルになってしまうので、あまり深掘りはしたくないんですが、死に対する自分なりの見解を作中に示した、というところまでは言えると思います。

――本作は狼の戦いを軸にしつつ、九郎や弦一郎、エマ、死なず半兵衛といった様々な人物にも焦点を当てていきます。狼以外の視点を取り入れて、葦名に生きる人々を描こうと考えた理由をお聞かせください。
沓名監督:ゲーム中に一般の人ってほとんど出てこないですよね。主要キャラクターは特殊技能を持った人ばかりで、その中で一番感情的に一般人に近いのが九郎だったんです。とはいえ九郎も幼い頃から監禁されていて、人らしい生活は送れていない。そこに人の感情を宿らせていくことが、映画では大事だなと思っていました。
九郎は竜胤の御子という特殊な存在としてずっと扱われてきた人なので、人と触れ合う時間が彼の成長には絶対に必要だと考えました。だからこそ、いわゆる普通の村人を登場させて、やり取りをする時間を作中に設けています。

――九郎は竜胤の御子という大きな責任を背負う一方で、村人と触れ合って年相応の表情を見せます。この両面を映像で見せるために、演出面で大切にしたことは何ですか?
沓名監督:九郎ってすごくいい子なので、年相応なリアクションを起こすには、ちゃんとしたお膳立てが必要だという思いがありました。村でおはぎを作るくだりなら満面の笑顔が出てもいいだろう、とか。最後、旅の途中で実を食べて狼が「まずい」と言うところでも、また満面の笑みが出る。
そういう彼にとっての本当の幸せを体験させてあげることが、九郎の子供らしい瞬間を出せる唯一のタイミングだと思ったので、そこは丁寧に描きました。

「MAX美しいをぶつけないと、この原作は使えない」
――本作は、全編手描きの2Dアニメーションです。3DCGの原作をあえて手描きで表現することにこだわった理由と、制作で特に難しかった部分を教えてください。
沓名監督:手描きにこだわった理由は、まずゲームの映像の質が圧倒的に高いからです。3Dでレンダリングされて、光の質感もフォトリアル。あの質感で真正面から勝負しても勝てるわけがない、と最初に思いました。だからこそ、自分の得意技である2Dアニメーションの「最大限美しい」をぶつけて、やっと映像化できる作品だなと。
門外漢のCGで似たような美しさを狙ったところで、この『SEKIRO』というタイトルにふさわしくなるはずがない。タイトルが大きすぎるので、やるならガチンコで、「MAX美しい」をできる限りぶつけないと、とてもじゃないが原作を扱えない。そういう思いがあったので、自分の得意なジャンルで美しさを追求する、という選択になりました。

難しかったのは、やはり現代劇ではないという点です。建物も着物も所作も、あらゆることを「知っているもの」として描けない。もう調べるしかないんですね。
当然ゲームは参考にするんですが、それだけでは描ききれないシーンもたくさんある。図書館に行って資料を大量に見て、「これは使える」というものを探す。そういう時間が、制作初期にはすごくありました。
さらに、時代考証の先生に入ってもらったり、「浅山一伝流」という古流剣術の先生方に話を伺ったりと、積極的に取材も重ねました。書籍からでは得られない情報がたくさんあるんです。
古流剣術は、言い伝えられてきたことを直接聞ける。当時のリアルはわからなくても、こういう形で受け継がれてきたという「リアル」がそこにある。そこから発想を広げていくと、“なんちゃって剣術”にならないし、時代描写も偽物にならない。そう考えて、頑張って調べて作ったというところです。

劇場アニメ「SEKIRO: NO DEFEAT」は、9月4日(金)より全国劇場にて3週間限定で上映中。Game*Sparkでは先行で視聴し、本作がどのような内容で、どのように『SEKIRO』を描いたのかをネタバレなしでレポートしています。あわせてご覧ください。
全編手描きで甦る狼と九郎の物語、そして監督が徹底した取材で作り上げた剣戟がどう描かれるのか、原作ファンならずともチェックしておきたい一作です。












