『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界

ゲーム音楽家・山岡晃氏と、『リトルナイトメア™』や『REANIMAL』を手掛けたTarsier Studiosにスペシャルインタビューを敢行。ゲーム制作における独特の考えや手法についてさまざまな角度から訊いてみました。

連載・特集 インタビュー
『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界
  • 『REANIMAL』はなぜ怖い?山岡晃×Tarsier Studios特別対談!“予測不能なホラー”の作り方―「整理されたカオス」が生む異様な世界

REANIMAL』は、初代『リトルナイトメア』と『リトルナイトメア2』を手掛けたTarsier Studiosが開発、THQ NordicがパブリッシャーのシングルプレイおよびCo-opプレイ(オフライン、オンライン)対応のホラーアドベンチャーゲームです。プレイヤーは、孤児の姉弟を操作して行方不明の「友達」を救い出し、不気味な怪物や動物たちが徘徊する地獄のような島からの脱出を目指します。

発売当初から注目を集めており、現時点でのSteamユーザーレビューは13,486件に達し、全期間で78%が「非常に好評」を獲得しているタイトルです。

そして今回、『SILENT HILL』シリーズなど、長年ホラーゲームの音楽とサウンドデザイン制作に携わってきた作曲家/ゲームデザイナーの山岡晃氏開発元のTarsier Studiosからナラティブディレクターのデイビッド・メルヴィック氏(David Mervik)とCEO兼プロデューサーのアンドレアス・ヨハンソン氏(Andreas Johnsson)をお招きし、お三方にさまざまなお話を伺う特別対談が実現!

本稿では『REANIMAL』を入り口に、ホラーゲームにおける「恐怖」とは何か?それはどのようにして生み出され、プレイヤーの心に刻まれるのか?をテーマに、異なる背景を持つクリエイターたちが、ゲーム制作の現場で繰り広げる試行錯誤のプロセスと、独自の方法論を赤裸々に語ってもらう特別インタビューをお届けいたします。

◆クリエイター対談:山岡晃×Tarsier Studios

◾️山岡晃氏(やまおか あきら)

山岡さんは、『SILENT HILL』シリーズをはじめとする数々のホラーゲームで音楽とサウンドデザインを担当してきた、世界的に著名な作曲家/ゲームデザイナーです。

山岡さんは音楽面だけでなく、ゲーム全体におけるプロデュースにも携わっており、ビデオゲームの可能性を追求し続けている業界の最重要人物です。また、氏の手掛けるサウンドは、工場の機械音や金属音など非音楽的な要素を取り入れるなど、独自のアプローチでゲーム制作の新たな地平を切り開いています。

今回のインタビューでは、山岡さんの独特な哲学や実践方法など、創作の現場においての思いをたっぷりとお聞きすることができました。筆者個人としては、学生の頃から『SILENT HILL』と山岡さんの大ファンであっただけに、インタビュー中はまさに夢のようなひとときでした

◾️Tarsier Studios(ターシア スタジオ)

本作を開発したTarsier Studiosは、2004年にスウェーデンで設立されたデベロッパーです。当初は大手作品の開発支援を主としていましたが、2017年に『リトルナイトメア』を発表し、世界的な大ヒットを記録しました。2019年にはEmbracer Groupの傘下となり、現在は独自のダークな作風を継承した『REANIMAL』で新たな挑戦を続けています。

今回インタビューを受けてくださったのは、デイビッド・メルヴィックさんとアンドレアス・ヨハンソンさんです。

まずデイビッド氏は、Tarsier Studiosでナラティブディレクターを務め、『リトルナイトメア』『リトルナイトメア2』と『REANIMAL』のストーリーテリングと世界観構築を担当しています。伝統的なストーリー構造に対して批判的な視点を持ち、予測可能な展開を避けることで常にプレイヤーを不安定な状態に保つ手法を追求しており、子どもの視点を通して大人の世界の醜さや暴力を描くことで、独特の恐怖と美しさが同居する世界を創り出しています。

次に、アンドレアス氏はTarsier Studiosの共同創設者の一人で、16年以上にわたりゲーム開発に携わっているCEO兼プロデューサーです。『リトルナイトメア』『リトルナイトメア2』や『REANIMAL』の開発において、ゲームデザインとプロダクションを統括しています。

◆なぜ『REANIMAL』は怖いのか?ホラーゲーム制作の舞台裏

ーー本日は、ご多忙の中お集まりいただきありがとうございます。よろしくお願いします。まず、『REANIMAL』を入り口として、お三方に「ホラーゲームにおける恐怖」とは何なのか、その恐怖がどう作られて設計されるのかについてお伺いしたいと思います。

デイビッド氏:まず、ゲームにおける恐怖を作るために気をつけているのが、「予測可能なことを避ける」ことです。特に人間の根本的な恐怖感というのは、「予測不能なことが起きる」ことだと思っているからです。たとえば、よくあるホラー映画は、次に何が起こるかが予測できてしまう。それが楽しいと思う人もいますが、それは「本当の怖さ」ではないのです。

予測できないことで、根本的な恐怖が味わえるんです。例えば、怖い夢っていうのは、自分のコントロールが効かないからこそ怖さが生まれてきますよね。

ーーありがとうございます。では、山岡さんに伺います。過去のインタビューでも、先ほどキーワードとして出た「予測不能性」が『SILENT HILL』の怖さを生んでいる、というお話をされてまして。それが山岡さんの思う「ホラーゲームにおける恐怖」と同義なのでしょうか?

山岡氏:もちろん恐怖もひとつのポイントだと思うんですけど、単に怖いコンテンツを作りたい、ということではない気がするんですよね。

特に『REANIMAL』や『リトルナイトメア』を遊んでいると、作品独自の世界観や雰囲気の中に入り込み、現実とは違う世界を自分自身で体験していくことに大きな魅力があると感じます。映画にも近いところがありますよね。だから、ホラーゲームの魅力って、単純に「恐怖」だけではないと思うんです。

ただ、「恐怖」という点に限って言えば、先ほどおっしゃっていた“予測不能さ”というのは、たしかにその通りだと思います。

アンドレアス氏: 私たちが作る世界について言えば、これまで一番しっくりきた説明は、世界をホラーの視点で見ること」ですね。『REANIMAL』の子どもたちは、現実世界の物事をホラーとして捉える感覚を持っています。その感覚が、この世界が彼らにどう見え、どう感じられるのかを決定づけているんです。

つまり、単に「恐怖を感じること」が目的なのではなく、恐怖や嫌悪といった感覚のフィルターを通して何かを捉えること。それが『REANIMAL』独自の世界を作るうえで重要なアプローチだと思います。

ーー山岡さんは実際に『REANIMAL』をプレイしてXで絶賛されていましたが、具体的にどのような部分が素晴らしかったでしょうか?

山岡氏:僕は音楽とサウンドデザインをやってますけど、まあもう、わかりやすく「音いいね」と。

ゲームとしての『REANIMAL』って、もう僕の中では絶賛を超えてるんですよ僕自身もゲームを作っていて最近よく思うんですが、例えばプレイヤーがいて、少し弱い敵がいて、ゲーム用語で言うところの「雑魚」や「大ボス」がいる。……僕はそういう言葉自体があまり好きじゃないんですけど(笑)。

そうやって最初から役割を決めて、「ここにはこういう敵を置いて、こういう流れにしよう」と作り手が安易にレールを引いてしまっているゲームが、多いように感じるんです。でも『REANIMAL』や『リトルナイトメア』は逆で、良い意味でそもそも発想の出発点が見えない

「どうやってこのゲームを作っているんだろう」「どうしてこんなアイデアが浮かんだんだろう」と思わされるんですよね。

山岡氏:たとえば、突然戦争のような、急に現実へ引き戻される場面があるじゃないですか。でも、そういう場面が入ってきても、僕は全然その世界から振り落とされなかったんですね。ずっと『REANIMAL』の世界観の中にいられたというか。

そうした現実感と幻想性のバランスもそうですし、ゲームデザインとしても、どうやったらああいう体験を作れるのか、すごく興味があります。もちろん、いちユーザーとしてゲームそのものもめちゃくちゃ楽しみました。

デイビッド氏:ありがとうございます。たぶんそれは「カオス」ですね。より正確に言えば、「整理されたカオス」と表現できるかもしれません。『リトルビッグプラネット』で仕事をした経験も少し影響していて、私たちはいわゆる「モチーフ」から発想を広げていくことがあります。

例えば、記憶に残っていることや、ふと思いついたひとつのアイデアがあったとします。そこから連想を広げて、さまざまなアイデアを出していくんです。その中から良いと思ったものを選び、一見バラバラに見えるアイデアをつなぎ合わせながら、ゲーム全体を形作っていきます。

また、私たちは常に新しいことをやろうとしています。ゲーム制作としては、とてもコストのかかるやり方です。ある仕掛けを一度か二度使ったら、すぐに次へ進む。そうやってテンポや感覚を変え続けることで、プレイヤーが予想できない展開や意外性を作っていくんです。

デイビッド氏:もうひとつ、私は個人的に「定型的な物語構造」があまり好きではありません。ナラティブディレクターとしては良くないのかもしれませんが(笑)、映画でもゲームでも、次に何が来るのか分かってしまうのが嫌なんです。例えば「ここで事件が起きる」「ここで転換点が来る」といった決まりきった構造に当てはめすぎると、どの作品も似た形になってしまいますよね。

構造を知っているプレイヤーなら、次に何が起きるか予測できてしまう。敵の強さについても同じで、「これはまだ本当の脅威じゃないな」と読まれてしまうことがあります。だから、物語の構造が「次はこれを置くべきだ」と要求してきたとしても、あえてそこから外して、プレイヤーの予想を裏切りたいんです。

もちろん、ただ崩せばいいわけではありません。物語はきちんと前へ進み、ひとつの“旅”として満足できる形で成立しなければならない。そのうえで、旅の道筋は私たち自身で決めたい。構造を理解したうえで、そこからどう外していくかを考えるんです。

そういう意味では、たくさんの「整理されたカオス」と断片的なアイデアを眺めながら、どう組み合わせればプレイヤーにとって最も面白く、豊かな体験になるのかを考えて制作しています。

◆クリーチャーデザインの意図と制作過程

ーー「整理されたカオス」という、一見相反する考え方は、『REANIMAL』や『リトルナイトメア』に登場するクリーチャーデザインにも表れているように感じます。不快感がありながら、どこか美しさも同居している。その感覚は『SILENT HILL』にも通じるのではないかと。本作のクリーチャーは、どのような意図や発想からデザインされているのでしょうか?

デイビッド氏:チームには、人間と動物の中間のような、不思議な生き物やモンスターを描く、とても才能のあるイラストレーターがいます。その方の絵を見て、「こういう方向にしてみよう」「ああいう形にしてみよう」と話しながら、何度も練ってキャラクターを作っていく感じですね。

プロジェクトの初期には、才能のあるコンセプトアーティストたちが、小さなスケッチブックにひたすら落書きやスケッチを描いていました。モンスターにはいくつかタイプがあって、より動物に近いものと、人型に近いものがいて、それぞれ異なる雰囲気を持っています。

ここで面白いのは、人型のクリーチャーは、どこから発想されたのかをある程度想像できることですたとえばスナイパーなら、多少誇張されていても、動き方や振る舞いから「どういう存在なのか」がなんとなく分かりますよね。

一方で、動物型のクリーチャーはもっと抽象的です。主要なモンスターには必ず、行動の核になる「動き」があります。たとえば「天井を歩く」「妖怪のように首を伸ばす」といった、ゲームプレイに使える行動からデザインを始めるんです。そこから、その動きに合う見た目や雰囲気を少しずつ組み立てていきます。

デイビッド氏:以前はそこまで意識していませんでしたが、ゲームの中で使えることがとても重要です。見た目がただイケてるだけで、ゲームプレイにつながらなければ弱い

たとえば「スニッファー(Sniffer)」や「Skins」などは、見た目から動きを予測しにくいデザインになっている。「こういう動きをするだろう」とプレイヤーが想像した通りには動かない。人間のような姿をしているのに、ヘビのようにくねくねと動いたりするんです。

ほかにも、天井に張り付いたり、壁を走ったりする。そうした普通ならありえない動きと、クリーチャーの形そのものがセットになっているんですね。それが、先ほど話していた「予測不能性」を生み出しているんだと思います。

ただし、最終的には反復と改善の積み重ねです。核となる案があっても、「もう少しこうできないか」「手足をもっと人間っぽくする?」と何度もマッシュアップしていくんですね。改善できるところは常にあるので、そのアイデアが最良の姿になるまで何度も試行錯誤していきます。

ーー「予測不能性」というキーワードの流れでお聞きすると、山岡さんは、音楽やサウンドにおいて相反する要素をどのようにゲーム制作に落とし込んでいますか? ‎

山岡氏:うーん、そこまで強く意識しているわけではないですね。ただ、音楽やサウンドについて言えば、たとえば怖い場面、悲しい場面、落ち着いた場面があったとしても、画面に見えている感情を、そのまま音楽でもなぞる必要はないと思っています。

そこに何かクリエイティブな広がりを作れないか、と考えています。ビジュアルとしてどう見せるのか、ストーリーとしてどう描くのかを踏まえたうえで、それとは少し異なるものを音で表現するようにしています

たとえば、先ほど「恐怖と美しさ」という話がありましたよね。恐ろしいシーンに、あえてとても美しい旋律や、美しいと感じられるサウンドを重ねる。そうすることで、単純に「怖い」だけではない雰囲気が生まれて、受け手にとって少し特異な体験になるのではないかと思っています。

デイビッド氏:それは非常に面白い考え方だと思いますね。良い意味で捻っているというか。ツイストしている感じで。

山岡氏:でも、そういう“捻り”に関しては、彼ら(Tarsier)のほうがずっと突き詰めていますよね(笑)。なので逆に、先ほどのお話について、もう少し彼ら自身の作り方を聞いてみたいです。

たとえば『REANIMAL』には、「羊の怪物」のような巨大で不気味なクリーチャーが登場しますよね。塔の上に現れたり、遠くから近づいてきたりと、かなり印象的な動きをします。そうしたクリーチャーの動きやアニメーションをチームで作るとき、イメージをどのように共有していたのでしょうか?

羊の怪物から逃げる圧巻のシーンは見応えたっぷりだ

ほかにも、砲台を操作するシーンがありますよね。ハンドルをガラガラと回して遠くを見ると、奥のほうに一瞬だけ、あの怪物らしき姿が映る。その時点では正体までは分からないんですけど、最後まで遊ぶと「ああ、あれはあの羊だったのか」と気づく。

そういう見せ方がまさに面白いんです。ただ、僕が気になるのは、そうした突飛なアイデアを、実際の制作現場でどう共有していたのかということです。

アニメーター、背景チーム、キャラクターチーム、サウンドデザインチームなど、それぞれ違う役割の人たちがいる中で、どうやって同じイメージや方向性を共有していたのでしょうか?

デイビッド氏:とても興味深い質問です。私の視点では、チームのメンバーはそれぞれの分野のエキスパートなので、基本的に「ストーリーはこうしてほしい」とか、作業内容を細かく指示することはありません。

たとえば本編には、男の子と女の子、そして子羊が登場します。物語の終盤では、成長した羊の怪物と子どもたちが再び出会うことになる。まずは、その「始まり」と「終わり」だけをチーム全体に共有しておくんです。

そのうえでキャラクターや動きが形になってきたら、たとえば「スーパーヒーローっぽいポーズ」や「『Bloodborne』の怪物っぽいポーズ」のように、どこかで見たことのある典型的な表現になっていないかを見直します。もしそうなっていたら、一度立ち戻って、そこからまた作り直す。そうやって何度も叩き直すことを繰り返しています。

つまり、「コンセプトから逆算」して作っていく。だから最初と最後は決まっているわけです。

最初の案ができたら、それを全体の文脈の中で見て、「ここにちゃんと属しているか」「この時点で最も上手く表現するにはどう形を整えるか」を考える。そこが重要なのかなと思います。

◆唯一無二の音響デザインと独自の表現手法

ーーとても興味深いです。つまり、ゴールから逆算して、さまざまなアイデアを使いながらそこへ向かっていくということですね。

デイビッド氏:その通りです。たとえば、「このシーンの最後はこうしたい」というイメージがあったんですが、最初にサウンドデザイナーが持ってきた音が、私たちの思い描いていたものとは少し違っていたんです。

そこで参考として挙げたのが、ドイツの実験的バンドEinstürzende Neubauten(アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン)です。彼らは、第一次世界大戦当時の銃器など、実在するさまざまな物を楽器のように使って音を作ることもあるんですね。

ノイバウテン

そういう音は、もう自分たちで作るしかない、オリジナルの音なんです。本作でもノイバウテンのようなアプローチができる人を呼んで、実際に音を作ってもらいました。

たとえば軍艦のシーンでは、肉屋から実際に鹿を買ってきて、茹でて骨を加工し、それを使ってラトル音(※ガラガラ、シャラシャラと響くような効果音)を作ったんですよ。

ーーそこまでやっているんですね。かなり独特な制作方法だと思います。山岡晃さんも『SILENT HILL』シリーズで、金属音など身の回りにある音を素材としてサウンドを作っていたという話があります。そういう「既存の音源だけに頼らず、自分たちで音そのものを作る」というアプローチには、共通する部分があるのでしょうか?

山岡氏:そうですね。極論を言えば、僕はゲームに音楽は必ずしも必要ないと思っているくらいなんです。ビデオゲームというメディアは、まずゲームそのものを楽しむためのものであって、良い音楽を聴くことが目的ではない。音楽を聴きたいのであれば、CDやストリーミングで聴けばいいわけです。

だから大事なのは、「そのゲーム体験にとって、何が一番適しているのか」ということです。その答えが、必ずしも音楽である必要はない。というのが僕の持論ですね。

だから、そういう意味では、『REANIMAL』そのものが持っている熱量が、面白さの起点になっているんだと思います。もちろん『SILENT HILL』でも、ノイバウテンは自分が強く影響を受けたバンドのひとつですし、両者には共通する部分も多いと思います。

アンドレアス氏:私たちはすごくラッキーだと思っています。まるでマグネットのように、周りに才能のある人たちが自然と引き寄せられてくるんです。『リトルナイトメア』を作ったときも、そこからまた新しい才能のある人たちが集まってきました。

たとえるなら、すでに素晴らしいオーケストラがあって、その中から作品に必要な一流の奏者を選んでいけるような感覚です。そういう作り方ができていること自体、とても幸運だと思います。

『SILENT HILL』から受けた影響

ーーこれまでずっと山岡さんは『REANIMAL』や『リトルナイトメア』を賞賛されていますが、逆にTarsierのお二人は『SILENT HILL』シリーズや、山岡さんの作品についてどのような影響を受けましたか?

デイビッド氏:『SILENT HILL』シリーズ、特に『SILENT HILL 2』は、私たちが目指したものにとって最初期の大きな影響、インスピレーションの一つでしたね

実は『REANIMAL』は、「『ゼルダの伝説 風のタクト』と『SILENT HILL』が出会ったらどんな作品になるか」という発想から始まっているんです。

『SILENT HILL』が持っていた、耐え難いほどの恐怖感や濃密な雰囲気。ただ道を歩いているだけなのに怖い、次に何が起こるか分からない――そういう感覚を目指しました。

プロジェクトに参加した全員には、「私たちが目指しているのはこれだけど、コピーを作るわけではない」と伝えていました。再現したかったのは作品そのものではなく、そのゲームを遊んだときに感じた感情なんです。

なので、「影響を受けた」という言い方では、むしろ控えめなくらいですね。正直、今こうして山岡さんと話していることを、うちのサウンドデザイナーや作曲家たちはものすごく羨ましがっていると思います(笑)。

一貫して「子どもが主人公」である理由

ーー『リトルナイトメア』と『REANIMAL』など、一貫して「子ども」を主人公にしている理由や、子どもの視点を通したホラー作品にしている意図を教えてください。

アンドレアス氏:スタジオを始めた頃から、ずっと自分たちの中にあるテーマだと思います。例えば、開発中止となった『The City of Metronome』を見ても、子どもや十代の若い子たちが、「本来そこにいるべきではない環境に置かれている」という設定になっています。

それによって非常に面白いコントラストが生まれ、大人を置いた時より感情移入しやすくなる。『The City of Metronome』の頃は、そういうことを話していた記憶があります。

『リトルナイトメア』を始めたとき、なぜ最終的に子どもを主人公にしたのかは、正確には覚えていません。ただ、最初に黄色いレインコートを着た子どものコンセプトアートがあって、その周囲にはグロテスクな人物や環境が描かれていました。

その子どもの可愛らしさと、怪物たちの奇妙さの組み合わせが、これまで見たことのない新鮮なものに感じられたんです。そこで『リトルナイトメア』では、徹底して「子どもの視点」から世界を見ることにしました。

そして、子どもが世界をどう感じるのかをあらためて考えてみると、目に映るものすべてが誇張され、大きく見えるんですよね。大人の腕は長く感じられるし、登らなければならない家具も巨大に見える。そうした感覚を、世界そのもののデザインに落とし込んでいきました。

デイビッド氏:アンドレアスが言うように、子どもの視点を通して大人の世界を見ると、あらゆるものが増幅され、誇張されます。それは、まるでおとぎ話のように幻想的な世界です。

一方で『REANIMAL』では、子どもたちが本来いるべきではない戦争の前線へ強制的に送り込まれる。そこは彼らにとって、「子どもたちが本来属していない世界」なんです。そして、その体験によってトラウマを背負うことになる。

そのコントラストを描きたかったからこそ、『REANIMAL』も「子どもの視点」で進んでいくホラーゲームになっています。

インスピレーションの源泉

ーー山岡さんが、仕事において最もインスピレーションを受けるものとは何でしょうか。

山岡氏:僕はやっぱり、「人」なんですよね。こうして初めてお会いする方もそうですし、仕事仲間でも友達でも、人が考えていることって、自分とは違うじゃないですか。「なるほど、そういう考え方もあるんだ」とか、「そう感じるんだ」とか。そういう、自分にはない発想や価値観に触れることが、すごく刺激になります。

それはゲームや音楽、エンターテインメントに限った話ではなくて、日常の中にある価値観そのものが、僕にとって大きなインスピレーションなんです。

結局、映画も音楽もゲームも、コンテンツそのものに意味があるというより、それを受け取った人がどう感じるのか、どう思うのか、その後どう行動が変わるのかということだと思うんです。

だから、結局は人なんですよね。僕は、いろんな人と出会って、話をすることから一番影響を受けていますし、それがそのままインスピレーションになっています。

夢のコラボが実現?共同制作への意欲と今後の展望

ーーせっかく山岡さんと、Tarsier Studiosのお二人がいらっしゃるので、最後にこれだけはお聞きしたいんですが。もし山岡さんとTarsier Studiosがタッグを組んでゲームを作るとしたら、どんな作品になると思いますか?

山岡氏:僕は『REANIMAL』の世界観やナラティブに、すごく独特な雰囲気を感じています。そのうえで、いちユーザーとして特に好きなのが、ゲームとしてものすごく親切で、丁寧に作られているところなんですよね。

たとえばパズルでも、ほかのゲームだと「え、これどこを押せばいいの? 分からないよ」と延々迷って、それ自体がストレスになることがあります。でも、『REANIMAL』にはそういうストレスがほとんどない

グラフィックデザインもそうですし、ゲームデザイン全体として、プレイヤーを自然に導く作りがものすごく丁寧なんです。それでいて、世界観はすごく豊かでしょう。その丁寧なゲームデザインと、独創的で豊かな世界観が両立しているバランスに、僕はすごく魅力を感じています。

「親切で丁寧なゲームデザイン」という言い方が正しいのか分からないですけど、もし一緒にゲームを作れるなら、ぜひそういう部分は彼らに任せてみたいですね。

デイビッド氏:『SILENT HILL』は、やっぱり私たちにとって憧れの存在なんです。 もし本当に一緒に何かできるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。
うちのスタジオには、『SILENT HILL』をきっかけにゲーム業界を目指した人がたくさんいるんですよ。

ほかにも『ICO』や『ワンダと巨像』、『バイオハザード』といった作品が、業界に入る大きなきっかけになったというスタッフも多いです。

ただ、いざ本当に一緒に作るとなったら、緊張して何もできなくなるかもしれません(笑)。敬意と畏れのあまり、みんな固まってしまうかもしれない。

でも実は今、私自身がすごく思い入れを持っているコンセプトがひとつあるんです。山岡さんは、それに完璧に合うと思っています。なので、ぜひ一度お話ししてみたいですね。

山岡氏:なんか大変そうなんだけど、Tarsierとの共同作業はめちゃくちゃ楽しそうですね(笑)。

アンドレアス氏:じゃあ、今すぐ私たちと契約しましょう!(笑)

ーーさて、名残惜しいですが一旦ここで終了させていただきます。本日は山岡さん、ターシアのお二人、貴重なお話を本当にありがとうございました!


こうして約2時間に渡り、さまざまな角度からゲーム制作への思いや情熱をお聞きすることができました。山岡さんとTarsier Studios、異なる背景を持つクリエイター同士が互いに敬意を払い、創作への刺激になっている関係性が本当に素敵でした。

とりわけ、お三方が将来のコラボレーションに意欲を示したことは、ホラーゲームファンにとって大きなサプライズ。いつか実現されることを心待ちにしたいと思います。

REANIMAL』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/XBOX Series X|S/ニンテンドースイッチ2向けに配信中。また2026年8月8日より、大型DLCの第1弾「The Prisoner」が配信されています。

ちなみに、全3章を含む「シーズンパス」が発売中です。第2弾は2026年10月~12月頃、第3弾は2027年1月~3月頃に順次配信が予定されています。

ライター:DOOMKID,編集:みお



ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

+ 続きを読む

編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

+ 続きを読む

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top