『Vainglory』ゼネラルマネージャーが語る、e-Sportsとコミュニティ発展への戦略 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『Vainglory』ゼネラルマネージャーが語る、e-Sportsとコミュニティ発展への戦略

モバイルで遊べるMOBA『Vainglory』の正式ローンチが7月3日(金)に予定されています。Android版の正式リリースや将来の方向性について、Super Evil Megacorp社アジア太平洋地域ゼネラルマネージャー、Yun Taewon(尹泰元)氏に訊きました。

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スマートデバイスをプラットフォームにした新作MOBAタイトルとして、iOS版が先行配信されていた『Vainglory』。いよいよ2015年7月3日(金)、Android版リリースと共に正式ローンチを迎えます。新たなユーザー獲得を狙う本作の戦略や、将来のゲーム方向性について、Super Evil Megacorpのアジア太平洋地域ゼネラルマネージャーに就任したYun Taewon(尹泰元)氏に詳しく話を訊きました。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

――最初にご自身の職務についてご紹介いただけますか。

Yun Taewon氏: アジア市場に『Vainglory』を売り込み、本社に「どのように開発すべきか」というフィードバックを与えるのが私の役目です。Super Evil Megacorp社では初のアジア勤務の社員です。前に勤めていたWargaming.net、Blizzard、Electronic Artsなどでも同じような仕事をしていました。

――今回ついに『Vainglory』のAndroid版が正式リリースされますね。

Yun Taewon氏: 今回のローンチが「Vaingloryのバージョン1.0」と考えています。モバイルゲームのプラットフォームはiOSとAndroidが90%を占めていますが、世界市場ではAndroidが優勢です。この傾向はアジアでは特に強く、Android版リリースによってユーザー数が3~4倍に増えれば、と期待しています。

――今後の方針についてもお聞きします。現在1つしかないマップの種類が増えることはありますか?

Yun Taewon氏: よく聞かれます! 今のところ新マップの開発予定はないものの、将来その可能性はあります。いずれにしても新しいアイデアは大歓迎です。

――ヒーローやスキンといったゲーム内要素が増えると「必要な知識が多くなり、新規ユーザーが圧倒されてしまう」という問題も生まれそうです。これにはどう対処しますか?

Yun Taewon氏: 新規ユーザーの方には、ゲームを早く覚えられるようにチュートリアルを充実させる予定です。たとえば「各ヒーローの紹介」や「AIを相手に新ヒーローを練習するモード」などですね。新しいヒーローのアビリティやおすすめのプレイスタイル、チーム構成などを紹介する公式Twitchチャンネルもあります。また、コミュニティにはTwitchやYouTubeで動画配信を行う方々もいますから、相互に学び合う環境もできているはずです。何よりMOBAの醍醐味はヒーローなので、『Vainglory』でも種類を増やしてより楽しいゲームにしたいですね。

――『Dota 2』で見られるような「キャラクター・UI・ボイスのカスタマイズ機能」を導入する予定はありますか?

Yun Taewon氏: 現在そのような計画はないのですが、可能性はあります。


――『Vainglory』はe-Sportsとどう関わっていくのでしょうか。

Yun Taewon氏: e-Sportsと言っても、市場としての発展性は未知数だと思います。スポーツというのは、小学校、中学校、高校、大学、そして地域といった草の根からスタートしますよね。最高峰はプロリーグで、世界大会もあります。しかし今のe-Sportsにはプロレベルの大会しかなく、スポンサーもゲームのデベロッパーが大半です。草の根のイベントはほとんどありません。

私たちが考えているのは「コミュニティと協力していく」という草の根の活動です。まずは皆さんに「自分たちで競い合いたい!」という意識を持ってもらおうと思っています。「競い合う場所がほしい、だから自分たちでリーグを作ろう」という感じですね。ユーザー主体のコミュニティにSuper Evil Megacorp社が場所や枠組みを提供することで、初めてe-Sports発展の環境が整うと考えています。

――モバイルはPCやコンソールのゲームとどの点で異なるのでしょうか?

Yun Taewon氏: 本質的な違いはないと思いますが、モバイルの特性はやはり「いろんな場所に持ち込める」ということです。PCやコンソールでは場所を限定されてしまいますが、モバイルなら友だちと1ヶ所に集まってチームで対戦するのも簡単ですから。

――日本のプレイヤーの特徴はありますか?

Yun Taewon氏: 意外なことに、日本のプレイヤーが世界で最もアクティブ(プレイ時間が長い)です。これは本当にユニークな現象だと思います。私が以前関わったゲームでは、プレイヤーが最もアクティブなのはどれも韓国でした。しかし『Vainglory』だと1日の平均プレイ時間は日本が100分で、韓国の90分を上回っています。世界の大まかな平均プレイ時間は80分ですから、日本のプレイ時間がどの国よりも長いんです。

また、日本のコミュニティに驚かされるのはその熱意と独創性です。活発な議論が多く、これまでにすばらしいコンテンツが日本で生まれてきました。世界的にもこの傾向を見たいですね。このような活動を著作権の侵害とする企業もありますが、Super Evil Megacorp社はファンの二次創作活動を応援しています。私の夢の1つは、『Vainglory』の作品がコミックマーケットを埋め尽くすことです。

――日本コミュニティを盛り上げるために、これからどんな活動を行っていきますか?

Yun Taewon氏: まずは皆さんにより良い配信環境を提供したいと思っています。ニコニコ動画やTwitchで「『Vainglory』をフィーチャーしてもらう」とか、「画面サイズを大きくしてもらう」といった具合ですね。各配信サイトでは人気者となってお金を稼ぐプレイヤーもいる一方、それを見て「どうすれば実力が伸びるのか」等を知りたいというプレイヤーもいます。配信が面白ければ視聴者が増え、配信者にも利益が出ますから、とても良い循環が生まれるはずです。

――攻略記事を執筆してくれたり、イベントを企画してくれたりしたファンに何か報酬を出すことはありますか?

Yun Taewon氏: 配信者や、イベント企画者を「ゲーム内やSNSでプロモーションする」「ICE(ゲーム内有料通貨)をお贈りする」などして応援することはあります。ただし、ファンに直接お金を払うことはしません。コミュニティは自然に立ち上がるべきであり、ファンの自発的な活動に対してはお金以外の方法でサポートしたほうがいいでしょう。なお、多くの地域でコミュニティ出身のコミュニティマネージャーを採用しています。日本ではVideo Villainさんです。

――では、将来「こういう活動が日本で生まれればいいな」というものはありますか? たとえばニュースサイト、情報まとめサイト、実況解説動画、LANパーティーなど。

Yun Taewon氏: 挙げていただいたもの全て、さらに、もっと別の活動もあればと期待しています! たとえば、ちょうど先日Twitterで「私の #vainglory」というキャンペーン(※)を始めました。Twitterで「#vainglory」を検索していただくと、独創的なツイートをたくさん見られます。見ていてとても楽しいですよ。

※筆者注: 「ユーザーに『Vainglory』プレイ中の写真をツイートしてもらい、特に「面白いツイートをした投稿者」「ツイート数が増えたコミュニティ」に賞品を贈呈するキャンペーン。

――今後、公式大会の開催もありますか?

Yun Taewon氏: ええ。日本だけではなく、世界中のチームが参加できる国際大会を考えています。たとえば来月韓国で招待制トーナメントを開催しますが、ここに日本の1チームが招待されて参加することになるでしょう。将来もそうした大会を多く開催したいと考えています。

しかし、重要なのはやはり公式大会ではなくコミュニティ主導の大会です。Super Evil Megacorp社は、「ファン自身が主催する大会なくして公式大会の意味はない」と考えています。公式大会は「ファン主催の大会から生まれたスター選手が、さらに多くの観客や『Vainglory』のグローバルコミュニティにスキルを見せるためのプラットフォーム」に過ぎません。

なおゲーム会社では通常、成功を測る物差しとして売り上げを見ると思いますが、Super Evil Megacorp社は「ニコニコ動画やTwitchの『Vainglory』の動画再生数」や「『Vainglory』のツイート数」などを指標に使っています。ゲーム会社に勤める友人たちはこのやり方をクレイジーだと言いつつも、同時に羨ましいと思っているんですよ(笑)。


――独特な手法ですね(笑)。ところで、Yun Taewon氏が『Vainglory』と出会ったきっかけは何だったのでしょうか。

Yun Taewon氏: 興味を持ったのがきっかけです。当時の私は「ゲーム業界の行く末」を色々と考えていました。そんなとき、「私を含め、周りにいる全員がiPadでしかゲームをプレイしていない」ことに気づいたのです。「モバイルこそがゲームの未来だ」と思いました。

とはいえ、当時のモバイルゲームに私は全然満足できませんでした。ハードコアゲーマーとして、自分ではPCやコンソールのようなゲームをプレイしたかったのです。何よりモバイルゲームには「毎日100ドル使ってゲームに勝つ」といったものが多く、「それってどうなのかな」と強く疑問を感じていました。

それでWargamingを抜けた後、時間ができたので今年の初めに色々とモバイルゲームをプレイしました。そこで出会ったのが『Vainglory』です。PCやコンソールのように洗練されたゲームで、ものすごく驚きました。「これこそが次世代のモバイルゲームだ」と思ったんです。

――だからSuper Evil Megacorp社に入ったというわけですね。

Yun Taewon氏: はい。Super Evil Megacorp社COOで今の直属の上司であるKristianに電話して「Super Evil Megacorp社はどんなことを考えていますか」と聞き、モバイルゲームについて様々な意見を交換しました。それが『Vainglory』日本リリース直前のことです。

それから間もなくして4月8日に行われた日本上陸記念イベントにも参加しました。そこで私は面接を受けたのですが……会場でそのことに気付いた人は誰もいなかったでしょうね(笑)。

――イベント会場で面接を受けていたとは(笑)。

Yun Taewon氏: ええ……(笑)。それからKristianとSuper Evil Megacorp社CEOのBo、この2人と一緒に中国、日本、そしてアメリカを約2週間回りました。とてもユニークな採用プロセスでしたね。

たとえば、上海では中国プレイヤーとのファンミーティングがありました。驚いたのはイベントのために北京から上海まで飛んで来たファンが何人もいたことです。中国では『Vainglory』がリリースされていないのにも関わらず。ミーティング後はファンと一緒にご飯を食べ、カラオケでたくさん歌い、『Vainglory』もプレイしました。

実は東京でのローンチイベントでも上海のようなカラオケ大会があったんです。私とKristianはテレビの前に座り、ゲーム業界や市場状況、思考方法、市場参入戦略などについて真剣に話し合っていたはずなのですが……いつの間にか、一緒にボヘミアン・ラプソディを歌っていました(笑)。私は音痴で歌を台無しにしてしまったのに、Kristianが採用してくれて驚いています(笑)。

それが2ヵ月半ぐらい前のことで……最近はほとんど家に帰っていません(笑)。アメリカには3回行ったし、日本には3週間いるし、韓国にも1ヶ月いるし…という具合です(笑)。


――BlizzardやWarmingでの経験は、『Vainglory』でどう活きていますか?

Yun Taewon氏: e-Sportsを運営し、成功と失敗の両方から貴重な経験を得ました。Blizzardはまさにe-Sportsの先駆者であったと思います。失敗の詳細は割愛させていただきますが(笑)、e-Sportsを世界に知らしめた会社です。一方Wargamingという会社は、「グローバルなe-Sports」の発展に最初から寄与して、「e-sportを土台にして物事を進める」という体験をしてきました。

『Vainglory』でもこれらの経験を生かし、皆さんの中に自然とe-Sportsへの意識が生まれるような、有機的なコミュニティを作りたいと思っています。

――ご自身が特に好きなゲームは何でしょうか? また、それは『Vainglory』の運営にも関連していますか?

Yun Taewon氏: 最近で言うと、『World of Tanks Blitz』をよくプレイしました。今までで特に好きなのは『Ultima III』『World of Warcraft』『大戦略エキスパートWW2』です。ゲームだけでなく本、アニメ、漫画、映画など色々なものに影響されるのがゲーム開発者で、『Vainglory』のビジュアルにも日本のアニメの影響が見られると思います。

――たしかに『Vainglory』では日本風の絵柄のヒーローが多いですね。

Yun Taewon氏: 私はゲーム業界で20年以上働いてきたのですが、そのほとんどがアメリカに拠点を置く企業でした。初めは「日本風のビジュアルを作ってほしい」と言っても、アメリカの開発チームはわかってくれなかったんです。2000年以降はだんだんと理解してくれるようになってきました。日本のアニメや漫画の人気が急上昇してきたこともあって、日本風のビジュアルが変だと感じる人はいなくなったと思います。

――Yun Taewonさんはどんな信念の下でゲームの仕事をされていますか?

Yun Taewon氏: 信念というか、開発したいのは「自分がプレイしたいゲーム」です。自分が面白くないようなゲームを他の人が楽しんでくれるはずはありませんから。関わるプロジェクトも、自分が楽しめるものでなくてはなりません。だからこそ情熱も沸いてくるのです。

―本日はありがとうございました。
《nemuke》

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