【クトゥルー神話ゲームブック】「このゲームブックを読む者に永遠の呪いあれ」(2) 6ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【クトゥルー神話ゲームブック】「このゲームブックを読む者に永遠の呪いあれ」(2)

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「それはなかなかいい質問だな」と藤田は言った。「なんでもいいんだが、描かれていない部分にこそ、物語芸術の真髄があるとおれは思っている。文学の場合は、構造的に可視化できない部分をうまく応用すること。ゴーゴリの『鼻』は、ある日に自分の鼻を落っことしちまった役人の話だが、その鼻がどんどん悪さをして、それがじつに笑えるんだな。ここに本があるから引用してみよう。

『「どんな風に消えたのでございます? 今ひとつよくわかりませんなあ」「どんな風にと言われたってねえ。問題はそいつが今も馬車を乗り回して町をうろつき、五等官と称していることだ。それでお願いしたいのは、そいつを出来るだけ早くとっつかまえてぼくのところに突き出してもらいたい、そう新聞に載せてほしいんだ。わかるだろ、ぼくの立場のなさ、人目につく体の一部がないんだからね」』

つまりね、おれの記憶が正しければ、この小説において、具体的に鼻がどれくらいの大きさであるとか、どんなふうに町を歩いているといった映像は、一切描写されないんだ。これは映画じゃ無理なことなんだな。つまりここまで異様な状況を映像としてはあいまいなまま残しておいて、そのあいまいさ自体を読者の想像力に委ねて楽しんでもらう、なんてことは。

それじゃあ、映画になにができるのか? これはおそらく色んなことができる。見えないものを使うなら、フレーム・アウトさせればいいんだ。小津安二郎の『東京物語』は見たか? まあ、とにかく家族の会話がたくさん出てくるんだがね、古い時代の日本の映画だからみんな畳に座って話をする。その話の内容自体もいいんだが、カメラの位置がね、登場人物たちの目の高さにあるんだな。それで視点がぱっぱっと切り替わる。みんなカメラを正面にとらえて喋る、つまり何事かを話されている相手の視線に視点が移りつづけるんだ。するとどういうことが起きるか? 話を聞いているほうの人間の、表情や反応が、まったく映らなくなるんだよ。これはすごい技法だよ。つまり人物の情感を伝える経路をまったくフレーム・アウトしてしまって、その空白を鑑賞者の想像力に委ねて楽しんでもらうんだ。これは、天才にしかできない。

だからここは無人なんだよ。この世界にはいまのところおれとお前しかいない。これで何かできるかと思ってそうしたんだが、どうだろうな。なあ、聞いてるか? おい。おまえだよ。そこでぼーっと見てるおまえだよ。意味わかってんのか? いい加減にしろよ。なんとか言えよ」

「なにを怒っているんだ?」とあなたは言った。

「おまえに言ったんじゃねえよ、馬鹿」

 藤田は紫煙を吹き、「スパ~」と言った。

「あ、それから、おれの本が現実世界で二冊出るからさ。これこれだ。よろしくスパ~」
「は?」
「次の質問」

25.そもそもゲムスパって何なんだ?
《Game*Spark》

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