――――――――――――17――――――――――――
工場を出て家路を歩いているとき、あなたは今日の出来事を思い返していた。あんなふうになるなんて、まいったな、とあなたは思った。多少の羞恥も感じた。また、ラインを止めてしまったぶん、給料からは一万円ほどが天引きされるだろう。ベルトコンベアの停止は完全に労働者の過失であり、経営者の責任では一ミリたりとも、まったく、ぜんぜんないからだ。そのことは、天の月のように明朗であった。晴れわたる夜空のように明らかだった。だからあなたは近所のポプラにてサントリーの「-196°Cストロングゼロ〈ダブルレモン〉」の500ml缶を三本購入し、どうにも我慢できなくなって、帰り道でそのうちの一本を空けた。すると恐怖の触手をにょろにょろと生やした10tトラックがあなたに突っ込んできて、あなたは死んだ。あなたが死んだことは天の月のように明朗だったが、天の月と違うのは、死んだあなたの姿を見て哀れむ者が、この世に誰一人としていないことだけだった。
ゲームオーバー