
日本の皆様は意外に思われるかもしれませんが、海外で最も長く続いているゲームジャンルの一つは、間違いなく宇宙戦闘機を主題とした宇宙戦闘ゲームです。宇宙戦闘こそがビデオゲームの始まりであった、と主張することもできるかもしれませんが、それは少々話が先に進みすぎでしょう。
そこで今回は、海外で制作された宇宙戦闘ゲームの歴史について、網羅的ではありませんが、簡潔にご紹介いたしたいと思います。記事の最後には、ジャンルの大家として、日本では「世界でもっともクラウドファンディングが成功したゲーム」としても知られる『Star Citizen』のクリス・ロバーツ氏からのメッセージもいただいております。
はじまりの宇宙戦闘~3D宇宙を自由に旅する初期の「オープンワールド」も宇宙戦闘ゲームにあった
厳密に言えば、ビデオゲームは1962年の『Spacewar!』から始まりました。これは非常にシンプルな対戦型の宇宙戦闘ゲームであり、後に1979年の『Asteroids』のようなアーケードゲームに大きな影響を与えました。
しかし、宇宙戦闘ゲームの本当の原点について語るのであれば、『Elite』に触れないわけにはいきません。
本作はBBC Micro向けに制作された、一人称視点の非常に独創的なゲームでした。BBC Microは1980年代初頭の英国の学校に広く導入されていたコンピューターで、当時の子どもたちの多く――私自身も含め――がこの機種でBASICによるプログラミングを学んでいました。
余談ではありますが、現在50代になっている英国のゲーム開発者たちが驚くほど高いコーディング能力を持っている理由の一つは、幼少期からプログラミング教育を受けていたことにあると言えるでしょう。
さて、『Elite』の話に戻ります。本作は非常に野心的で大規模な作品であり、実在するかのような(残念ながらシームレスではありませんが)オープンワールドの銀河を自由に航行し、海賊や「サーゴイド(Thargoids)」と呼ばれる謎の異星人と戦いながら、星系間で物資や貴重品の取引を行うことができました。
しかし、そうした活動を行う前に、まず最初の宇宙ステーションへドッキングしなければなりませんでした。これはプレイヤーに対し非常に大きな壁のひとつだったのです。
そのステーションは回転しており、わずかな幅の投入口のようなドッキングポートに、手動操縦で衝突せずに進入する必要がありました。一見すると簡単に思えるかもしれませんが、実際には極めて困難でした。
多くの子どもたちは、運が良ければドッキングに成功するまでに、何百回もステーション正面に激突することになりました。激突してしまえば、たいていの場合そのままゲームオーバーです。セーブさえできません。
もちろん、この操作を自動で行ってくれるドッキングコンピューターを購入することもできましたが、それは宇宙ステーション内部に入った後でなければ(そのうえ多少はゲームを進めお金を得た後でなければ)入手できませんでした。これはゲーム史上でも特に意地の悪い設計の一例と言えるでしょう。
それでもなお、『Elite』は真の文化的現象となり、惑星への着陸などの要素も取り入れた、その続編『Frontier』は1990年代の私のような若者たちを大いに驚かせました。冒頭シーンはいまなお、ある種の文化的遺物のように、私の記憶に深く刻み込まれています。
ここからは、その後の宇宙戦闘ゲームにおける二つの異なるアプローチについてご説明する必要があります。ただし、ここで用いる用語は日本で一般的に使われているものとは異なりますので、その点はどうかご容赦ください。
補足:日本と海外の異なる言葉「シミュレーションとアーケード」
日本においては、「シミュレーション」および「アーケード」という用語は、海外での意味とは大きく異なります。日本では、海外で「ストラテジー(戦略)」と呼ばれるジャンルのゲームが「シミュレーションゲーム」と称されることが一般的です。また、「アーケード」という言葉は、主にゲームセンターで遊ばれる、あるいはゲームセンター発祥の作品を指す場合がほとんどです。
一方、海外においては、これらの用語は異なるゲームジャンルやタイプを示す言葉として用いられています。
まず「シミュレーション」とは、文字通り航空機や戦車などの操作を「模擬する」ことを意味します。たとえば、実際にその乗り物を操縦・運転しているかのような体験を、細部に至るまで再現し、「現実らしさ」を追求することに主眼が置かれています。
これに対して「アーケード」は、ゲームセンターで遊ばれる作品を指すこともありますが、それに限らず、操作やルールがより簡潔で直感的であり、現実の再現よりもゲームプレイそのものの楽しさを重視するスタイルを表す言葉としても用いられます。
以降は、これら二つの用語を国際的な意味で使用いたします。
『スター・ウォーズ』と『ウィングコマンダー』
言うまでもなく、『スター・ウォーズ』は宇宙戦闘ゲームに多大な影響を与えました。『Elite』もその例外ではありません。しかし1990年代には、『Elite』と同様に宇宙船を操縦する感覚の再現を目指した作品が他にも登場しました。その代表例が、1990年に発売された『Wing Commander(ウィング・コマンダー)』です。
『Wing Commander』シリーズでは、プレイヤーはひとりの宇宙戦闘機パイロットとして、キルラシ(Kilrathi)との恒星間戦争を戦います。キルラシは大型で知性を持つ虎のような異星種族であり、これはラリー・ニーヴンのSF小説に登場する、同じく虎に似た異星人「クジン(Kzin)」への創作的なオマージュであった可能性が高いと考えられています。
本作も『Elite』同様、一人称視点で宇宙船を操縦するものでしたが、(日本でいえば『エースコンバット』シリーズのようなゲーム進行で)より直接的な戦闘に重点が置かれていました。特に後期作品における大きな特徴は、マーク・ハミルなど実在の俳優を起用した実写カットシーンでした。当時のPCゲームとしては限界に挑むグラフィック表現も相まって、熱狂的で大規模なファン層を築くことになります。
これと並行する形で、そして部分的には『Wing Commander』の成功に後押しされる形で、同様のゲームスタイルを採用した公式の『スター・ウォーズ』宇宙戦闘ゲームも登場しました。1993年の『Star Wars: X-Wing』、そして1994年の『Star Wars: TIE Fighter』です。
多くの人にとって、これらの作品こそが宇宙戦闘ジャンルへの本格的な入口でした。当時の若いゲーマーたちにとって『スター・ウォーズ』の影響力は非常に大きく、誰もが信頼するXウイングのコックピットに座るルーク・スカイウォーカーになりたいと夢見ていたのです。
私自身もPC版『X-Wing』をかなり遊びましたが、戦闘の最中にシールドや兵装の出力を管理する要素が多く、忙しくも奥深い体験でした。
本作は技術的には(メカアニメでも主人公が行うような、全エネルギーを○○に、というような出力管理などを含めて)Xウイングの操縦を「再現」しようとしていましたが、操作体系や複雑さの多くは整理・簡略化され、よりアーケード寄りの手触りを持たせていました。
その傾向は、1998年にニンテンドー64向けに発売された『Star Wars: Rogue Squadron』でさらに強まりました。本作はより純粋なアクション志向となり、一般的な空中戦ゲームのように「地平線」を意識した設計がなされ、操作も一層シンプルでアーケード色の強いものとなっていました。
また、『Descent: FreeSpace』(通称『Freespace』)や『Colony Wars』にも触れておくべきでしょう。
『Freespace』は、優れた360度全方向戦闘を特徴とする『Descent』シリーズの流れを汲む作品で、元は宇宙鉱山内部を飛び回るゲーム性でしたが、その戦闘システムをそのまま宇宙空間へと展開した作品でした。特に続編『Freespace 2』は、そのスケールの大きさと重厚な物語性により、現在でも非常に高く評価されています。
一方、『Colony Wars』は、よりアーケード寄りの宇宙戦闘ゲームで、プレイヤーの「慣性」を強調した設計が特徴でした。ただしそれはあくまで演出的なもので、時間の経過とともに徐々に減速していく仕様となっていました(実際の宇宙空間ではこのような現象は起こりません)。
『Colony Wars』は英国でも大きな人気を博しました。本作を開発したPsygnosisは、すでに『Wipeout』シリーズやサイバーパンク調シューティング『G-Police』で成功を収めていた実績があり、その流れも人気を後押ししていました。
宇宙戦闘ジャンルの衰退と復活
しかしながら、2000年代初頭にかけて、宇宙戦闘ジャンルの新作は次第に減少し、発売された作品も商業的には振るわないケースが目立つようになりました。
その主な理由を断定することは難しいものの、他ジャンルとの競争が激化したことや、より本格的なシミュレーション性を重視する作風が、多くのプレイヤーの嗜好と合わなくなっていったことなどが背景にあったと考えられます。
しかし時代が進むにつれ状況は変化し、2010年代初頭頃から大小さまざまな宇宙戦闘ゲームが再び登場し始めました。ここで挙げられる代表的な作品が、『Elite Dangerous』および『Star Citizen』です。
なお、『EVE Online』についてはここでは割愛いたします。同作は大規模多人数同時参加型のオンライン宇宙ゲームであり、宇宙戦闘という枠組みを超えた、まったく別種の存在だからです。正直なところ、本作を適切に扱うには非常に長い別稿が必要となるでしょう。本稿ではあくまで宇宙戦闘というテーマに焦点を絞らせていただきます。
また、『No Man's Sky』もありますが、これはいわば「あらゆる要素を内包した」作品であり、宇宙戦闘はその一部に過ぎません。
さらに私の場合は新たに現れた作品のひとつの例として『Strike Suit Zero』に触れることも可能ですが、私は同作のリードゲームデザイナーを務めたものの、最後まで開発に関わることができず、最終的な製品版は私の意図したものとは大きく異なっています。(その後に出た『~Infinity』『~Director’s Cut』にも関わっていません)そのため、本稿の文脈ではあまり適切な例とは言えません。
さて、『Elite Dangerous』は、現代版『Elite』として企画された作品であり、グラフィックやプレイ可能な規模の面で大幅な進化を遂げました。戦闘や交易といった要素は依然として基盤に据えられていますが、度重なるアップデートを経て、現在では非常に充実した作品へと成長しています。
本作は依然としてシミュレーション寄りの作品ですが、戦闘をより直感的かつ迫力ある体験にするための工夫が重ねられており、サーゴイド(Thargoids)の再登場は、まさに恐怖そのものと言える存在感を放っています。
そして『Star Citizen』ですが、こちらはまた別種の、極めて大規模なプロジェクトです。確かに『Wing Commander』シリーズの系譜をゆるやかに受け継いではいますが、そのスケールははるかに拡大されています。
『Star Citizen』『Squadron 42』、そして未来
ここでは、『Starlancer』および『Freelancer』についても触れておく価値があります。最初に登場したのは『Starlancer』で、本作では宇宙戦闘が大きな要素を占めており、その意味では『Wing Commander』シリーズの精神的後継作の一端と見ることもできます。また、ドリームキャスト版も発売されました。
その後に登場した『Freelancer』は、時系列上『Starlancer』の続編にあたり、規模や構想の面でもより大きく、野心的な作品でした。本作では『Elite』のように交易要素も導入されました。また、『Star Citizen』との関係においても重要な作品であり、『Star Citizen』は当初、『Freelancer』のリブートとして構想されていました。
いずれにせよ、『Star Citizen』は2012年に正式発表され、非常に野心的なクラウドファンディング作品としても知られています。その後、累計で9億ドル以上を集め、2017年にはアーリーアクセスを開始しました。現在では数えきれないほど多くの宇宙船が存在し、購入や操縦が可能となっています。中には、宇宙を航行する豪邸のような役割を果たすものもあります。
さらに本作は、広大かつ極めて複雑なパーシステントワールド(永続的世界)を備えており、その規模はいまなお拡張を続けています。
戦闘機クラスの機体を操縦する体験から、巨大な主力艦(キャピタルシップ)の運用、それらの内外で起こりうる個人単位の銃撃戦に至るまで、そのスケールは他に類を見ません。あらゆる意味において、『Star Citizen』は「究極の宇宙戦闘ゲーム」と呼び得る存在と言えるでしょう。
「完成」のアナウンスこそなくとも、その開発が歩みを止めているということもなく、年月を重ねるごとに、グラフィック面および機能面の進化も著しく、いまだその成長に終わりは見えていません。
そして本年2026年の後半には、『Star Citizen』をベースにシングルプレイを主軸とした宇宙戦闘作品『Squadron 42』の登場も予定されています。やはり圧倒的な映像表現と高い完成度を備えた内容になるとされています。
両作品は世界観を共有していますが、どちらか一方をプレイしなければもう一方を楽しめない、というわけではありません。この点も非常に好ましい設計と言えるでしょう。
第1作は約70のミッションを収録する予定とされており、その後さらに2作の続編が計画されています。
かつての『Wing Commander』同様、『Squadron 42』にも著名な俳優陣が多数参加しており、そして――マーク・ハミルも再び名を連ねています。
さて、ここで触れておくべきなのは、これらの作品の多くが日本ではそれほど広く知られてこなかったという事実です。実は、それこそが今回この原稿の執筆を依頼された主な理由でもあります。
しかしながら、良いお知らせもございます。私は『Wing Commander』シリーズ、そして現在は『Star Citizen』を手がける中心的デザイナーであるクリス・ロバーツ氏に、そもそもなぜこの種のゲーム制作に惹かれたのか、そして今後日本における展開をどのように考えているのかについて、直接お話を伺うことができました。
クリス・ロバーツから日本のゲーマーたちへ
私は、プレイヤーの皆さんが夢を体験し、私の想像力から生まれた世界や宇宙を探検し、その中で生きることができる――その「可能性」と「冒険心」に満ちた感覚を心から愛しています。
サイエンスフィクションの世界では、あらゆることが可能です。
そのため、『Squadron 42』に日本語字幕を実装してリリースした後は、『Star Citizen』の日本語対応に取り組んでいく予定です。
クリス・ロバーツ
February 2026
『Squadron 42』『Star Citizen』の日本語対応予定という日本のコアゲーマーにとって非常に素晴らしいニュースをもって、本稿を終えたいと思います。




