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『アイマス』の神髄はアイコンタクトにあり、『アイドルマスター スターリットシーズン』相手の目を見て話そう 『ゲームで世界を観る#15』

アイドルたちの魅力的な表情はどのようにできているのでしょうか

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『アイマス』の神髄はアイコンタクトにあり、『アイドルマスター スターリットシーズン』相手の目を見て話そう 『ゲームで世界を観る#15』
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本記事は『アイマス』制作の裏側を探る内容です。アイドルをとことん大事にしたい方はご注意ください。


これまでシリーズに触れたことがなかった私が『スターリットシーズン』のPVを観たとき、その表情の豊かさにただ驚嘆するばかりでした。アニメ調のグラフィックの作品はこれまでも多くありましたが、ここまで溌剌とした表情は観たことがありません。本作が標榜している「ドキッとするような存在感」を見事に実現し、日本式アニメトーンにおける最高峰と言っても過言ではないでしょう。

何故私たちは彼女たちの表情に引き込まれるのでしょうか。じっくり観察すると、遠目には目立たないごく僅かな変化にこそ、「存在感」の秘訣があることが分かりました。

目は口ほどにものを言う、ということわざがありますが、欧米圏と日本を含むアジア圏では、表情を読むときに見ている場所が違うことが研究で明らかになっています

顔文字の比較を見ても、日本は目の部分、欧米圏は口の部分が大きく表現されていますね。生後7ヶ月の頃には見るパーツの違いが現れているようで、ゲームの分野においても欧米ではリップシンクが正しくないと気持ちが悪い、という意見が出ることがあります。近年では表情そのものの作り方が違うという研究もあり、記事の画像を参照すると、やはり目回りの特徴が大きく出ているように見受けられます。

『アイドルマスター』においては、ポージングはもうちょっと楽にしてと思うこともありますが、目の表情の作り方は特に気合いが入っていることが見て取れます。目線の動きは早い段階から取り入れていましたが、『スタマス』は情報量が大幅に増えたように感じました。

『アイマス』ではどんなポーズをとっても目線がプレイヤーの方に向けられるようになっていますが、これによって逆に「視線を外す」ことにも意味が発生します。杏がゲームに夢中になっているところ話しかける場面では、杏はチラリと横目をむけるだけです。そしてまたすぐに目線を外し、プロデューサーよりもゲームという関心の程度が示されます。

他の多くのゲームでは、プレイヤーとまっすぐアイコンタクトするところまで表情ができていないので、「目線が合う、外れる」という体験が『アイマス』の白眉と言えるでしょう。考え事をするとき、自信が無いとき、ごまかすとき、その繊細な視線の動きをキャッチして、隠されている不安を探り当てるのもプロデューサーの力量です。

コミュの場面では、表情の付け方が行ごとでなく、台詞一つ一つにきちんと合わせて作られています。例えば未来との初顔合わせのシーン。「初めまして」と声をかけたときにはニュートラルな表情でしたが、「765プロのプロデューサーだ」と名乗った瞬間、彼女の顔に驚きと緊張が表れたのが分かると思います。画面上はほんの僅かな動きですが、二つの印象の違いをはっきりと感じ取れますね。これは人間の脳の中に「顔領域」という顔だけに特化した部位があり、微細な顔の動きを瞬時に認識できるようになっているのです。

眉の動きや口角はある程度分かりやすいですが、目の方もかなり細かい演技付けを行っています。目の開き方は見開く、リラックス、細めるの3段階あり、そこに目頭、目尻の動きが加わって、目の輪郭の動きだけでも多彩な組み合わせがあります。興奮や驚きの時には瞳の大きさも変わりますし、ここに眉と口の動きがあると「表情のブレンド」が起こります。

心理学者ポール・エクマンによると、人間の感情は「怒り」「嫌悪」「恐怖」「喜び」「悲しみ」「驚き」の6種類からできていると言われています。普通のゲームであれば「喜び」「怒り」「困惑」など、1つの感情につき1つのフェイスパターンですが、各パーツの組み合わせを変えることでグラデーションを生み、生き生きとした表情が出てくるのです。

この場面だと、目を細めて口角が上がる「喜び」の表情とともに、眉の方はハの字になる「恐怖」「悲しみ」が現れており、「褒められて嬉しいけれど落ち着かない」という「照れ」が表現されています。

こちらは先の驚きと目の動きは同じですが、口角が上がっていることで、驚きがありつつも新しいことへの期待、わくわくを表現しています。人間はアイコンタクトや表情の察知で「オキシトシン」、いわゆる愛情ホルモンが出ると言われており、『アイマス』は感情表現に於ける多彩なバリエーションを作ることで、会話をしているだけでどんどん思い入れが強くなっていくのです。

この表情のブレンドが遺憾なく発揮されているのがライブステージで、家庭用機の前作『ステラステージ』と比較すると眉毛と口の動きが明らかに変わっており、より大きく機敏に動くようになりました。カメラ目線の決め顔に全てのプロデューサーがハートを射貫かれたに違いありません。

瞬間的に緊張やリラックスなどのニュートラル、ネガティブの表情を差し挟むことで、笑顔がより一層際立つのです。笑顔も目の開き具合で感じ取れるものが違ってきますし、瞬きするたびに表情が変わって一秒たりとも目が離せない活発さを出しています。

コミュにおいても、ステージにおいても、これらの表情は全て手作業で作られたものであり、アイドルひとりひとりの感情を細かく追いかけ、膨大な手間を費やしたからこそ成し得るものです。ここに作り手の「愛と情熱」がぎっしり詰まっており、プレイヤーもまた同じだけの愛と情熱を注ぐことができるのです。


《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

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