ただ「読むだけ」じゃ生き残れない。恐怖で体力が減り、選択にも時間制限が迫る…緊迫感が恐ろしいPS2異色ホラー『歸らずの森』【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ただ「読むだけ」じゃ生き残れない。恐怖で体力が減り、選択にも時間制限が迫る…緊迫感が恐ろしいPS2異色ホラー『歸らずの森』【特集】

『零』『SIREN』とも異なる、隠れた名作ホラーの魅力を再発見。

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ただ「読むだけ」じゃ生き残れない。恐怖で体力が減り、選択にも時間制限が迫る…緊迫感が恐ろしいPS2異色ホラー『歸らずの森』【特集】
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PS2が全盛期を迎えていた2000年代前半、ホラーゲームはさまざまな方向へ進化を遂げていました。

たとえば、『零』のようにカメラを使って霊と対峙する作品や、『SILENT HILL』のように探索と戦闘を通じて恐怖を描く作品が登場する一方、文章や静止画を中心としたノベル形式のホラーゲームも独自の発展を続けていました。

そうした時代の流れの中で、2002年12月26日にグローバル・A・エンタテインメントからPS2用ホラーアドベンチャー『歸らずの森(かえらずのもり)』が発売されました。

本作は、森の奥にある洋館を舞台に、中学生たちが怪異に立ち向かいながら脱出を目指す静止画とテキストを主体としたビジュアルノベル形式のホラーゲームです。

しかし、本作が唯一無二で“隠れた名作”と呼ばれる所以は、ノベルゲームでありながら、ただ「読むだけ」では決してクリアできない独自のゲームシステムを組み込んでいるからです。

それは、一般的なホラーゲームと同じように「躰力(体力)」の概念が存在し、常に死(ゲームオーバー)と隣り合わせの緊張感があることに加え、恐怖や危機に襲われる場面では、選択肢に時間制限を設けた「霊刻システム」が発生することです。

さらに、本作では朝までに洋館から脱出しなければならず、探索や休息にも時間がかかります。躰力を回復させようと休んでばかりいると、今度は脱出までの時間が足りなくなってしまうのです。こうした時間と体力の管理が求められる、一筋縄ではいかないゲーム体験が待っています。

また、人間の精神が徐々に蝕まれていく「陰湿な和風ホラー」と「理不尽な閉鎖空間」の融合を描いた独特の美学は、同時代の『SIREN』や『零』とも異なる雰囲気を持っていました。

そこで本稿は、本作のストーリーやゲームシステムを振り返りながら、普通のサウンドノベルとは一線を画していた、その異質な魅力を掘り下げます。

◆死を告げる占い、森に棲む神様─「呪われた洋館」で始まる恐怖

物語の舞台は、東北地方にある架空の町「守森町(かみもりちょう)」。町の近くには古くから「もりがみさま」と呼ばれる神様が祀られている森があり、地元では人々を守る存在として言い伝えられていました。

ところが、町の中学校では「もりがみさま」を呼び出す占い遊び(コックリさんみたいなもの)が流行し、その占いを試した1年生の園田ユカリは、自分が死ぬと宣告されてしまいます。

死を免れるためには森の奥にある洋館へ行かなければならないと告げられたユカリは、そのまま姿を消してしまう…というのが事の発端です。

左からユキ、タツヤ、ヒトミ

そして彼女を助けようと立ち上がったのが、学級委員の「芹沢ユキ」、幼なじみの「篠崎タツヤ」、霊感を持つ「山瀬ヒトミ」の3人。

しかし、洋館へ足を踏み入れた彼ら自身も怨念に囚われ、館から出られなくなる事態に。こうして、3人の命がけの脱出が始まるのです。

ゲームは、基本的に3人のリーダー・ユキの視点で進行しますが、特定の場面においてはタツヤ、ヒトミの視点に切り替えることが可能で、タツヤの行動力、ヒトミの霊感など、それぞれの特性を生かし状況を打開していくことになります。

本作の世界観の特徴は、学校で流行する占い遊びと、地方に残る神様の伝承を組み合わせていること。日常的な遊びがきっかけとなって怪異に巻き込まれる導入には、学校の怪談や都市伝説を思わせる親しみやすさがあります。

一方、舞台となる洋館には、悪霊や怨念、神秘的な儀式に関する資料が残されており、探索を進めることで土地の伝承と館の歴史が少しずつ結びついていきます。

舞台が「東北の田舎町」であることも手伝い、都会から切り離された深い森、そして怨念が渦巻く洋館という、逃げ場のない和製ゴシックホラーとして完成されており、美しさと不気味さが同居する本作独自の魅力を持っていました。

◆一瞬の判断ミスが死につながる。緊迫感のある「霊刻システム」とは?

本作は、基本的に静止画とテキストを読み進めながら選択肢を選ぶ、サウンドノベルに近い形式を採用しています。しかし、単に物語を読み進めるだけではクリアできません。

プレイヤーは洋館の各エリアを探索し、「どの部屋に入るのか」、「何を調べるのか」などといった選択肢から、移動先や行動を決定。アイテムや資料を集めながら、脱出に必要な手掛かりを見つけていきます。

ただし、探索は極めてシビアであり、「選択肢を適当に選んでいれば進める」という甘さは一切ありません。

例えば、ゲーム内にマップ機能は一切なく、プレイヤーは各部屋のつながり(「右の廊下」「奥の通路」など)を文字と背景グラフィックから自力で把握し、頭の中でマッピングしながら進める必要があります。

また、手に入れたさまざまなアイテムは、適切な部屋の適切な仕掛けに対して使用する必要があります。

一例を挙げると、右奥の部屋にある発電機を動かして館に明かりを灯すために、「ウォッカ」、「針金」、「ペンチ」などの複数のアイテムを正しい手順で組み合わせて稼働させる、といったパズル的な謎解きが要求されます。

タイムリミットのある「霊刻」システム

このハードコアな探索に加え、プレイヤーに危険が迫る時など、生死を分ける特定の場面で発生するのが「霊刻」というシステムです。

これはリアルタイムで制限時間内に行動を選択する仕組みで、判断が遅れたり、誤った選択をしたりすると、ゲームオーバーにつながる場合があります。さらに厄介なのは、必ずしも素早く行動することが正解ではなく、あえて何もせず待つことが適切な場面もある点です。

例えば、ある部屋に入ったところバスタブから異臭がしたので調べることに。ここで霊刻が発動し、普通にバスタブを調べるのか、はたまた危険を察知して部屋を出るのか?プレイヤーの瞬時の判断が試されます。

突然の怪異に対して、わずかな時間で対応を判断しなければならないため、文章主体のゲームでありながら、アクションゲームにも似た緊張感が生まれているのは特筆すべき点です。

他にも、調査中に不審な足音が近づいてきたところ、霊刻が発生。咄嗟に「どこかに隠れる」を選択して、やり過ごそうとしますが、ハンマーを持った怪異に殴られあえなく死亡。刻一刻と制限時間が減っていくハラハラした緊張感を味わいました。

つまり本作では、手掛かりを集める計画性と、危険な場面で瞬時に行動を決める判断力の両方が必要になるわけです。

「文章を読む」というノベルゲームの基本的な遊びに、生存をかけた駆け引きを組み込んだことが、本作ならではの独特の面白さにつながっていました。

◆恐怖を感じるだけで弱っていく「躰力」システム

本作でもうひとつ見逃せないのが、登場キャラの精神的・肉体的な状態を数値化した「躰力(体力)」システムです。

通常のホラーゲームでは、敵の攻撃や罠によって体力が減少するものですが、本作では探索中に「恐ろしい出来事」に遭遇することでも「躰力」が減少してしまいます。

さらに体力が低下すると、幻覚や幻聴を体験するようになり、見えないはずのものが見えてくる危険な状態に陥ります。

こうした描写は、主人公たちが精神的・肉体的に疲弊し徐々に蝕まれていく様子を見事に表現しています。

一方で躰力を回復する方法も用意されており、タツヤが持参した「ミネラルウォーター」や「チョコバー」などを使用可能ですが、その数は極端に少なく、自動回復ポイントなどもありません。

ただし、メニュー画面から「休息」を選べば、徐々に躰力は回復してくれます。

ここで時間制限と「躰力」が密接に結びついてきます。無理をして探索を続ければ危険が増し、慎重に休んでばかりいれば朝までに脱出できなくなる。プレイヤーは登場人物の状態を確認しながら、どの程度の危険を引き受けるべきか判断する必要があります。

怪異の恐ろしさを物語の演出だけに頼らず、ゲームシステムに直接反映している点は、本作の大きな魅力といえるでしょう。

◆サウンドノベルに新たな「恐怖」を生み出した隠れた名作ホラー

本作が興味深いのは、基本的な文章と静止画を中心としたシンプルなサウンドノベルでありながら、制限時間付きの「霊刻」によって素早い判断を迫り、「躰力」によって恐怖や負傷が探索に影響する仕組みなど、本作ならではの緊張感を生み出していたことです。

また、単に洋館から脱出するだけでなく、各部屋に残された資料やアイテムを調べ、土地に伝わる「もりがみさま」の謎を解き明かしていく過程にも、アドベンチャーゲームとしての面白さがあります。

無事に生き延びることを優先すれば、事件の真相を十分に理解できない場合もあり、限られた時間のなかでどこまで探索を続けるかという判断が求められます。

もちろん、手掛かりの分かりにくさや厳しい時間制限、セーブの不便さなど、ゲームとしての完成度には課題も残されていますが、ホラーゲームの恐怖を映像や音響だけに頼らず、プレイヤーの選択や時間管理にまで結びつけた発想は、今振り返っても独創的です。

ノベルゲームの「読む楽しさ」と、サバイバルホラーの「生き残る緊張感」を融合させようとした『歸らずの森』。

粗削りながらも意欲的な仕組みを備えた本作は、異色の和製ホラーとして改めて評価したい一本です。

《DOOMKID》


心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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