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各国が反応する「ルートボックス問題」を振り返る―問題視される理由と現状について【年末年始特集】

2017年終盤から、ゲームに関する話題として大きく取り上げられた「ルートボックス問題」。本記事ではこの「ルートボックス」について振り返り、その問題点や現状を整理します。

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2017年終盤から、ゲームに関する話題として大きく取り上げられた「ルートボックス問題」。本記事ではこの「ルートボックス」について振り返り、その問題点や現状を整理します。

■ルートボックス問題って?




本記事では、2017年11月に発売されたエレクトロニック・アーツの『STAR WARS バトルフロント II』を中心にしたルートボックス問題を取り上げます。今作ではマイクロトランザクションシステム(少額課金システム)に対して批判が集まり、その対応として課金要素が一時的に停止された騒動から端を発していました。日本でいえばソーシャルゲームの「ガチャ」に関する騒動に類似し、海外では「STAR WARS」ブランドの知名度もあり、この問題を巡って各国の政府機関や団体が規制の動きを見せたり、独自に声明を出したりするなど、大きく議論を呼んでいます。また、これ以前にも2015年の『PAYDAY 2』におけるマイクロトランザクション導入や、後述する中国の法案施行など類似の騒動は発生しており、数年の間に蓄積した問題意識が改めて表出したと捉えることもできるでしょう。

■ルートボックスやマイクロトランザクションって何?




マイクロトランザクションとは、ゲーム内のアイテムなどを少額の課金で購入できるシステムのこと。ルートボックスシステムはその一種であり、アイテムそのものではなく、アイテムの入った宝箱をユーザーに入手させる仕組みのことを言います。また、ゲームによっては宝箱のカギを有料で販売するなど、既に多くのバリエーションが存在しています。

■結局何が問題視されてるの?




「ルートボックス」で問題視されているポイントは、ゲーム内のルートボックス制度がギャンブルにあたる可能性が存在するというところ。もしルートボックスがギャンブルに相当するのであれば、適切なレーティングが必要となり、対象とならない若年者に対して住み分けを行う必要性が生じてきます。しかし、ルートボックスシステムは既に様々なゲームに採用されており、その中にはレーティングが行われておらず、誰にでもプレイできるタイトルも存在します。また、国によってはギャンブルが許可制になっており、実施するには認可が必要なケースもあるため、現在各国で「ルートボックスはギャンブルにあたるのか否か」という議論が繰り広げられているのです。

■ゲーム業界の反応




これに対しゲーム業界では、様々な人物や団体から色々な反応が見られており、『Grand Theft Auto V』などのタイトルで知られるTake-Two Interactiveの会長、Karl Slatoff氏はルートボックスの合法性を主張しています。また、ゲームイベント「E3」の開催などで知られるアメリカのビデオゲーム団体「ESA(Entertainment Software Association)」も同様にルートボックスの合法性を主張。その一方で、2017年11月には業界の指導者や専門家による委員会である「NCGP(National Committee for Games Policy)」が組織されており、ゲーム業界からの意見を統一して政府に提供、ゲームに関係する法律などの適切な発展を目標として活動しています。また、同委員会は民間資金のシンクタンク「NCGP ITK」や自主規制組織「NCGP SRO」などを設立するなど、既に具体的な行動を開始しています。

■そのほかユーザーやデベロッパーなどの反応




また、AppleはApp Store配信タイトルの審査ガイドラインにおいて、ルートボックスの存在するアプリケーションについて、各タイトルのタイプ別アイテム排出率の開示を義務付けました。そのほか、デベロッパーのPlaysaurusがクリッカーRPG『Clicker Heroes 2』において、課金中毒のユーザーから収益を得ることを望まないとして同作をF2Pから買い切り型のタイトルに移行したり、エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム『FIFA 18』において、ユーザーからゲーム内課金要素を原因に含むボイコット運動が発生したりと、ルートボックスに限らず課金要素そのものに対して業界全体がセンシティブになっている様子が伺えます。また、この問題をネタとして、初代『DOOM』にルートボックス要素を追加するジョークModが作成されるなど、ユーザー間でもこの問題の存在は把握されていることが確認できます。

■現状での各国の反応




●アメリカ


アメリカでハワイ州政府の議員であるChris Lee氏が『STAR WARS バトルフロント II』や同様のギャンブル的要素を含むとするゲームを規制する法案を策定しており、また「ルートボックス問題」への調査を行っています。また、ハワイ州ではルートボックスシステムの存在するゲームをギャンブルだと認定しており、同議員は可能であれば上記の流れをアメリカ全土でも行うとしています。一方、アメリカのゲームレーティング組織「ESRB(Entertainment Software Rating Board)」は、『STAR WARS バトルフロント II』発売以前ではありますが、ルートボックスはギャンブルにあたらないとの見解を示しています。ただし、同団体は業界組織が主導する非営利団体であり、実際に現金を賭けて行う「Real Gambling」とそうでない「Simulated Gambling」を以前より区分しているという背景が存在している点に留意が必要です。

●ベルギー


ギャンブルが合法なものの許可制であるベルギーでは、『STAR WARS バトルフロント II』やの『オーバーウォッチ』のマイクロトランザクションシステムに対していち早くギャンブルの可能性を指摘し、調査を開始したと報じられていました。そして一度はギャンブル当局からルートボックスがギャンブルに当たると報道がなされたものの、後にベルギー公共放送RTBFが、ギャンブル当局委員長Etienne Marique氏から依然調査中であるとコメントを受けるなど、情報が錯綜しているのが現状となっています。しかしながら、ベルギーではルートボックスに関する問題が大きく注目されており、話題になっていることに間違いはないようです。

●ニュージーランド


ニュージーランドでは、ギャンブル規制担当省庁が海外メディア「Gamasutra」の問い合わせに回答しており、それによるとルートボックスシステムはギャンブルにはあたらないとしています。ただし、これはルートボックスがニュージーランドにおいて2003年に成立したギャンブル法の定義を満たさないという根拠によるものであり、この問い合わせに回答した内務省ギャンブルコンプライアンス事務所のライセンスコンプライアンスマネージャーであるTrish Millward氏は、今後も同様の問題について注目していくとしています。

●中国


中国では、『STAR WARS バトルフロント II』リリース以前からルートボックスの確率表記を義務付ける法律が施行されており、中国国内では『オーバーウォッチ』のルートボックス出現確率が公表されています。『STAR WARS バトルフロント II』以後に目立った報道は少ないですが、ある意味ではルートボックス問題の最先端を行っていたと考えてもいいかもしれません。



今年一年で大きく話題になったルートボックス問題ですが、まだまだ世界中で調査や議論が進行中であり、今後も目を離すことができないのが現状です。ルートボックスを導入しているタイトルは決して少ないわけではなく、その中には世界中で大きな人気を誇るゲームも存在するため、2018年以降においても、多くのゲームユーザーにとって他人事でない問題になるかもしれません。
《吉河卓人》
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