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『Horizon Zero Dawn』太古からの「相棒」だった槍と弓 原初を象徴する武器の歴史とは【ゲームで世界を観る#22】

道具の歴史とは距離を伸ばしていく過程とも言えます。

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『Horizon Zero Dawn』太古からの「相棒」だった槍と弓 原初を象徴する武器の歴史とは【ゲームで世界を観る#22】
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Horizon Zero Dawn』でアーロイが使用する武器「弓」と「槍」の起源は古く、人類が文明を形成する以前の石器時代から存在していました。マンモスやサーベルタイガーと対峙する、いわゆる「原始人」の象徴として目にすることも多いでしょう。本作で絶滅した動物を模した機械獣相手にこれらの武器を用いて挑むのは、太古の人類の再演に他なりません。アーロイや私達現代人の遥か前、古代の人類はどのように武器を発展させたのでしょうか。

槍、すなわち棒の先を鋭利に尖らせた武器は、ホモ・サピエンスよりも更に遡った原人や旧人類の旧石器時代から存在し、石を尖らせた穂先の証拠は最古で50万年前のものが見つかっています。石斧やナイフと同様に、人類初期から使われてきた武器の一つです。さらに、棒を尖らせて「突く」行為は現在のチンパンジーでも確認されており、「ヒト」以前の類人猿でも発明していた可能性が浮上しています。槍投げは29万年前には行われていた証拠もあり、金属の刃が登場するまでの長い間、人類のメインウエポンだったと言えます。

ネアンデルタール人も槍を使っていましたが、ホモ・サピエンスは槍を投げるための道具「アトラトル」を開発し、投擲距離を大きく伸ばしたことから生存に優位だったという説があります(諸説あり)。約10~6万年前に登場したアトラトルは槍を引っかけてカタパルトのように飛ばす道具で、手で投げるよりも安定性が高まります。同時期の氷河期の危険な大型動物を狩猟するにはとても有効で、現在でもオーストラリアのアボリジニ(現地先住民)が使用しているのが有名です。飛ばす槍に矢羽根のようなものがついていることから、このアトラトルを使用する過程で、投げる槍本体が軽く細い矢に変化していったと考えられます。

弓矢も世界中のあらゆる文化に普及していることから、同時多発的な発明よりも、人類がアフリカを出る頃にはすでに一般化していたという見方が現在では有力です。現在見つかっている最古のものは南アフリカのシブドゥ洞窟で発掘された約6万年前のもの。発射する弓に大きく力を溜めることで、撃ち出す方の軽量化、威力と飛距離の強化に繋がりました。これ以降アトラトルは徐々に弓矢と切り替わり廃れます。

植生が激変する氷河期を生き延びるために、人類は狩猟能力を高める必要に迫られました。アトラトルや弓、スリングなどの遠距離攻撃の道具を使って、マンモスに代表される大型哺乳類を倒すことで、食料や毛皮、日用品を作る材料を安定的に得られるようになりました。約6~5万年前、人類はアフリカから世界中に進出する「グレートジャーニー」を開始、毛皮の服や脂の燃焼などを用いて極寒の環境においても生活が可能になったのです。

人類の移動と同時期に、各地にいた大型哺乳類は一斉に数を減らし、サーベルタイガーやマンモスなど絶滅する種も多くありました。氷河期の終わりによる植生の変化もありますが、人類の狩猟や媒介した感染症がその一因とする説もあります。ともあれ、自然の脅威を克服する術を得た人類は無事に氷河期を乗り越えました。

約1万年前、気候が温暖になり植物が増えてくると、人類は狩猟から定住と農耕へとシフトします。動物を狩るよりも豊かな土地をキープすることが重要になり、狩猟の道具は敵対者や身内のルールを破る者、つまり人間へ向けられることが多くなりました。

アルプスの氷河で見つかった約5,000年前の遺体「アイスマン」は、法医学で検証した結果、矢を撃たれて殺されたことが判明しています。複数人によって追跡されており、アイスマン自身も矢で撃ち返した後に、死体から矢を回収したことが持ち物の矢に残る血液で確定しました。アイスマンが何をやってそのような状況に追い込まれたのかは不明ですが、複数日に襲撃を受けているため、部族内で確実に殺すよう指示されていたのは間違いないでしょう。

考古学上で最古の集団戦闘の痕跡は、スーダン、ジェベル・サハバで発見された15,000~12,000年前のものです。まとまった人骨59体のうち23体に槍と矢による殺害が認められました。略奪と殺傷の意図を持って攻め込んだとみられています。

農業による人口増加と共に、集団戦闘の技術が形成されていく中で、青銅や鉄の剣が登場した後も、距離のアドバンテージから槍と弓矢は銃の登場まで軍事の主力として使われてきました。戦闘の距離を大きく伸ばした中世の火薬と銃の登場は、50万年に及ぶ人類武器史に於ける最大の転換点と位置づけられます。

「『棒』は、悪い空間を遠ざけるために」と、『デスストランディング』にも引用されていますが、「槍」と「弓矢」はより遠くから攻撃する、まさに「遠ざける」ための道具でした。グレートジャーニーや文明の拡大、武器、情報伝達に至るまで、人類の歴史は「より遠く」を追い求める旅だったのかもしれません。槍と弓矢はその旅路にずっと寄り添ってきたのです。


《Skollfang》
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