長い忍耐の12年―Valveはこの間に何をしていたのか?
『Half-Life 2: Episode Two』の衝撃的なラストの後、Valveから主な続報が無かったものの2008年2月にはEurogamerからの質問で、『Portal』続編について語られると共に『Episode Three』への意欲を示していました。この時点で数ヶ月以内に『Episode Three』の新情報を告知すると伝えられていましたが、1年以上経っても新たな展開は発表されず、手話でのアニメーション研究や2010年内でのリリースが絶望的、『Half-Life』次回作では心からの恐怖させる必要がある……などなど、断片的な情報が流れてくるのみでした。
2010年にはE3 2010で『Episode Three』やSource Engine 2発表があるのではという噂も飛び交ったもののValveは様々な噂を否定。2011年2月には、『Episode Three』発売に関して話す準備が出来ていないというValveのコメントがあったものの、3月にはフリーマンの冒険が終わっていないことも語った他にも、12月には音声収録の噂がでていました(なお2011年8月には本社前でファンが『Half-Life 3』を要求する場面もあった)。
この2012年以降、何らかの噂が出たとしてもValveは否定を続けるのみで事態は進展しません(『3』に纏わるこじつけ的な予想がネットミーム化したのもこの時期から)。『Half-Life 3』の噂はオープンワールド化やAlyx役女優のモーションキャプチャーなどいろいろな形で世に出ていたものの、直に滞っていきました。これらの有象無象の噂の中で、2019年の今に注目しておきたいのは、2015年の「Mobile World Congress」での「『Half-Life』の新作または移植版を開発中」というリップサービスです(一方で3月4日にはSource 2 Engineも発表されている)。
また同年には、Valveのデザイナーから「『Half-Life 3』はリリースされない」との噂にコメントしたり、『3』がVRゲームにならないとValveのライターのChet Faliszek氏が言及することもありました。少し時が進み2017年にはValveの内部事情において実写とRTSの2種類のプロトタイプが存在することや、インサイダーによる『Half-Life 2: Episode Three』やスタンドアロン作品登場について否定的な内部事情など語られていた一方、Valveが本格的なシングルプレイゲームを開発中と語る場面もありました。しかしながら、『Half-Life 2』や『Portal』のシナリオライターのErik Wolpaw氏やマーク・レイドロー氏が退社。同氏は退社後に『Episode Three』へ言及したり、ファンフィクションとしてのプロットを公開するなどしていたこともあり、今後の『Half-Life』そのものの展開についても絶望視されていました。
2018年3月には、Valveが再びゲーム開発を行うと宣言すると共に、Valve独自のVRヘッドセットとVR版『Half-Life』の存在が噂されました。さらに2019年1月には一時退社していたライターのErik Wolpaw氏がValveへ復帰。11月19日には『Half-Life: Alyx』が発表され、同月22日に詳細も披露されました。
ここでは主に『Half-Life』関連の動向をまとめましたが、Steamのほうでは2010年にMacへ対応。2012年にはLinuxへの対応に注力しており、2013年にはリビングルーム向けのSteam OSとSteam Machine、そしてSteam Controllerを発表。2014年にSteam MachineとSteam Controllerのリリースを計画していましたが、2015年へと発売延期しています。2015年11月にはSteam Machineをリリースし、ニューウェル氏もコンソールより同価格帯で優れると自信を見せていたものの、2018年にはSteamから大半のSteam Machineの表記が削除される自体になってしまっています。
VRそのものについては、2015年にHTCと共同開発し「Vive」を発表しルームスケールの体験を生み出すと共に、2018年には独自のVRヘッドセット「Valve Index」を発表しています。一方で『Dota 2』の盛り上がりなど、この10年でValveはマルチプラットフォーム展開だけでなく、ハードウェア方面での拡大を目指してきたことがこの軌跡から読み取れます。