
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
『War Robots』の成功が、世界のメカゲーム市場の本当の規模と構成について教えてくれること
これは、『MechWarrior』のような作品が文化的にどのような影響を与え、その結果として『War Robots』のような大ヒット作が生まれたのかを扱う、本連載内の一連の記事の、第4回にして最終回です。
本記事でご説明する内容の背景をご理解いただくためにも、まずは前の3回の記事をお読みいただくことを強くお勧めします。
静かに成功を収めた『War Robots』

『War Robots』は2014年にモバイル向けタイトルとしてリリースされた基本プレイ無料のマルチプレイヤーシューターです。『MechAssault』のような作品が採用していた、遊びやすい操作体系と手動エイムによるゲームプレイを受け継いでいます。
また、『World of Tanks』のような作品からも学びつつ、未来的なメカをアップグレード・カスタマイズし、それらをマルチプレイヤーマッチへ投入するというアプローチを採用しました。
その後PC版もリリースされ、あまり大きく報じられることはなかったものの、2025年までに本作は300万人ではなく3億人以上のプレイヤーを獲得し、累計売上は10億ドルを超えるという、成功を収めました。
何が起こったのか、そして『War Robots』がどのような土台の上に築かれたのかを理解するためには、まず海外におけるシューターというジャンル全体に目を向ける必要があります。
『MechWarrior』は『Call of Duty』へと進化した
1990年代にPC向けタイトルとして『MechWarrior 2』が成功を収めた後、パブリッシャーであるActivisionは、その経験を活かしながら『Call of Duty』のようなシューターへ段階的に投資していきました。この流れには長く複雑な経緯がありますが、ここですべてをご説明すると長くなりすぎますし、本題からも少し外れてしまいます。
重要なのは、『MechWarrior 2』と、その後の『Call of Duty』シリーズ、特に『Modern Warfare』シリーズに共通しているのは、「ミリタリーをテーマにしたシューターを遊びたい」という需要を取り込んだことです。
現在、『Call of Duty』シリーズは、非常に人気の高いモバイル版も含めて約5億人のプレイヤーを抱えています。この数字はさらに多い可能性もあります。というのも、現在公表されている最新のデータは2021年時点のものであり、それ以降『Call of Duty: Mobile』は非常に順調に成長を続けているためです。
なお、ここでいう「モバイル」とは、スマートフォンやタブレットでプレイできるという意味ですが、重要なのはBluetooth対応のゲームパッドを使用できることです。そのため、実際のプレイ感覚は携帯型ゲーム機で遊んでいるのと非常に近いものになっています。これは、少なくとも海外ではこの種のゲームをゲームパッドで、携帯型ゲーム機と同様の体験で楽しむユーザーが多いためです。
私自身も『Call of Duty: Mobile』に携わり、河森正治氏をはじめとするメカデザイナーとのコラボレーションを手掛けました。そして、ここから再びメカゲームと『War Robots』の話へと戻ります。
海外ではメカゲームはシューターとして認識されている
海外でメカゲームを遊ぶ大半の人は、メカゲームをシューターとして捉え、そのようなゲームプレイを期待しています。
だからこそ、『War Robots』はこれほどまでに的確にユーザー層を獲得できたのです。本作はメカをアクションゲームとして扱おうとはせず、未来の戦場における軍用兵器として描き切っています。
一方で、『アーマード・コアVI』が300万本の販売を超えられなかった理由の一つもここにあります。本作は固定軌道型のロックオンシステムを採用し、シューターというよりもアクションゲームとしてのゲームプレイを重視していたためです。
もちろん、『アーマード・コア』シリーズが自らを「ハイスピードメカアクションゲーム」と位置付けていることは理解しています。しかし海外では、特に初期シリーズはアクションゲームではなく、シューターの一種として認識されています。
それには十分な理由があります。クラシックな『アーマード・コア』のゲームプレイは、銃器やキャノン砲、ミサイルをはじめとする数多くの射撃兵器を中心に構成されており、レーザーブレードはあくまで「予備武器」として位置付けられているからです。
また、300万本という数字は過去作と比べれば非常に大きく感じられるかもしれません。しかし、『アーマード・コアVI』はシリーズで初めて本格的な開発予算と大規模なプロモーション予算が投入された作品でもあります。
そのため、この規模の予算をかけた他作品と比較すると、『アーマード・コア』シリーズの販売実績は決して突出したものとは言えません。
もちろん、この傾向は『アーマード・コア』だけに限りません。海外では、多くのメカアクションゲームが十分なユーザー層を獲得できていません。例えば、『ゾーンオブエンダーズ マーズ』シリーズは一貫して販売本数が伸びず、私が心から愛している『電脳戦機バーチャロン』も、本来のユーザー層に十分届くことはありませんでした。
要するに、私自身はメカアクションゲームをとても楽しんでいますが、海外ではこのジャンルは今後もニッチな存在であり続けるでしょう。なぜなら、多くの人がメカに期待しているのは、「メカで撃ち合うこと」だからです。
結局のところ、海外ではメカゲームはシューターとして認識されています。そのため、ゲームを本来のターゲット層へ届けるためには、このジャンルが海外でどのような歴史を歩んできたのかを理解することが極めて重要なのです。
迷ったら、高橋良輔作品のメカアニメを参考にすべき。ただし「蒼き流星SPTレイズナー」は例外
海外におけるメカゲームの源流は、基本的に二つの日本作品に行き着きます。それが「太陽の牙ダグラム」と「装甲騎兵ボトムズ」です。
その理由は、これらの作品に登場するメカデザインが、1980年代から1990年代にかけてアメリカやヨーロッパで成功した数多くのゲームにおいて、直接流用されたり、非常によく似たデザインの着想源となったりしたためです。
つまり、ゲームに限らず、海外における「メカ」という概念の土台には、高橋良輔作品のメカアニメが大きく関わっています。
ただし、ここには一つだけ例外があります。それが「蒼き流星SPTレイズナー」です。
私自身、「レイズナー」は大好きな作品ですが、アメリカで初めてBlu-rayが発売されたのは2023年のことでした。それ以前は、作中のメカデザインがゲームで使われたり、他作品に流用・引用されたりしたことはありませんでした。つまり、「レイズナー」は海外ではほとんど知られておらず、「ダグラム」や「ボトムズ」のように、暗黙の共通認識として理解されている作品ではないのです。
もう一つ「レイズナー」に関する問題は、そのスピード感です。前回までの記事でも説明したように、メカゲームでは、人間よりもはるかに高速で移動するメカを操作するため、ターゲティングは非常に難しい問題となります。メカは巨大である一方、その移動速度も大きくなるため、従来型の手動エイムでは対応が難しくなります。
その点、「レイズナー」に登場するメカの速度は、強力なエイムアシストを用いたとしても、手動エイムを前提とするには速すぎます。そのため、ゲームとして成立させる難易度が高くなります。さらに、「レイズナー」のようなタイプのメカに対する文化的な蓄積も海外にはほとんどなく、多くの人がこの作品を初めて知ったのは2023年になってからでした。
要するに、新しいメカシューターを作るのであれば、まず「ダグラム」や「ボトムズ」におけるメカの動きや表現を参考にするべきです。
これは決して抽象的な話ではありません。実際に『War Robots』は2025年に大河原邦男氏とのコラボレーションを実施しており、その際に登場したメカデザインは、現代風にアレンジされてはいるものの、「ダグラム」からそのまま出てきたかのような印象を受けるものになっていました。

『War Robots』を真似する必要はない
ここまで『War Robots』の成功についてかなり強調してきましたが、同じ海外の巨大なユーザー層にアプローチするために、このゲームをそのまま真似する必要はないという点も理解しておくことが重要です。
個人的には、『War Robots』も『War Robots Frontiers』もあまり好みではありません。しかし、これらの作品は、日本と海外の間に存在する、メカという題材における非常に明確な文化的な接点が実在することを示しています。
そして、その文化的な接点そのものも、先ほど述べたように日本に由来しています。そのため、このジャンルにおいては、クリエイターが自由に探求できる余地が数多く残されているのです。
また、私はニッチなメカゲームを全面的に支持しています。たとえ多くの人には理解されなくても、そうした作品を遊ぶこと自体に大きな楽しさがあります。しかし、そのような個性的でニッチなメカゲームが存在し続けるためには、まずメカゲームというジャンルそのものが、投資家に対して成功する市場であることを証明しなければなりません。
つまり、幅広いユーザー層に支持されるメカゲームが存在することで、その成功が土台となり、ジャンルをさらに発展させる、より挑戦的でニッチなメカゲームが生まれやすい環境を支えることになるのです。
では、海外向けのメカゲームにはどのようなアプローチが最適なのか?
考慮すべき重要な要素はいくつかあります。
まず第一に、そのゲームは手動エイムを採用したシューティングゲームである必要があります。銃やキャノン砲については、プレイヤー自身が敵を狙って射撃できるようにしなければなりません。ここにエイムアシストを導入することは問題ありませんし、少なくとも銃器について、プレイヤーが手動で照準を合わせられることが重要です。ミサイルのような兵装についてはロックオン方式でも構いませんが、銃であれば手動エイムが基本です。
また、この手動エイムは先ほど述べたゲームスピードの問題とも密接に関係しています。「レイズナー」に影響を受けたメカゲームが海外でうまくいかない理由の一つもここにあります。シューターとして手動エイムが成立するには、メカの移動速度に一定の上限があるため、その限界を超えてはいけません。
第二の要素は、ゲームの世界観とメカそのものに、説得力のあるミリタリー性を持たせることです。海外では、多くの人がメカに対してそのようなリアリティを期待しており、それは今後もしばらく変わることはないでしょう。
そして第三の、そしておそらく最も重要な要素が適切なプロモーションです。
日本には非常に優れたメカゲームが数多く存在しますが、その多くは十分なプロモーションを受けられず、その結果として海外で本来のユーザー層に届くことができませんでした。
私は『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』が海外で発売された当時のことをよく覚えています。当時私が勤務していたゲームスタジオでは、その発売を知っていたのは私だけでした。本作は日本国外ではほとんど宣伝されず、私のような熱心なファンを除けば、多くの人は発売されたことすら知りませんでした。
同じことは『クロムハウンズ』にも当てはまります。本作は海外のゲーマーに非常によく合った作品だったにもかかわらず、適切なプロモーションがほとんど行われなかったのです。
日本のメカゲームは、そのルーツが日本のアニメにある海外作品に後れを取っている
残念なことですが、海外のメカゲームは、その多くが日本のメカアニメを明確なルーツとしているにもかかわらず、日本のメカゲーム以上に普及し、高い人気を獲得するようになっています。
私の連載コラムの最後には、毎回「日本企業のメカゲーム作りをお手伝いしたい」という一文を添えています。その思いは今もまったく変わっていません。ただ、その背景についてもう少し補足したいと思います。
私は『Gears of War: Judgment』や『フォートナイト』をはじめ、多くの作品でゲームデザインに携わってきました。その経験から、複雑なエイムアシストやターゲティングシステムがどのように設計されているのかについて、実践的な知識を持っています。また、海外のさまざまなゲームで日本のメカデザイナーの方々とも仕事をしてきた経験があり、そうしたメカデザインが海外のユーザーにどのように受け入れられるかについても理解しています。
それだけではありません。私は海外市場におけるプロモーションについても実務経験があり、現在『War Robots』のような作品しか十分に取り込めていない、この非常に大きく、かつ明確なメカゲームユーザー層に対して、どのようにアプローチすべきかも理解しています。
私は心から、日本のメカゲームに成功してほしいと願っています。しかし、そのためには支援が必要であり、同時に海外のゲームユーザーの実態を正しく理解することも欠かせません。
そのお手伝いを、ぜひ私にさせてください。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。










